ドイツの太陽光発電、「失敗」から日本が学べること:ビジネスニュース オピニオン(2/4 ページ)
ドイツは膨大な太陽電池を導入した結果、固定価格買い取り制度(FIT)が維持できなくなり、崩壊寸前――このような意見を耳にしたことはないだろうか。このような見方は正しいのか、FIT導入目前の日本が学べることは何か、解説する。
ピーク需要を賄う
IWRは、太陽光発電のメリットとして、kWh当たりの発電コストが高いガスタービン発電を稼働させなくてもピーク需要を賄えることを挙げている。
ドイツの太陽光発電は日中のピーク電力需要を賄う役割を十分に果たす規模に成長しているのだろうか。5月25日に限らず長期間にわたって検証した報告もある。ドイツの研究機関であるFraunhofer研究所の太陽光関連の部門Fraunhofer-Institut für Solare Energiesysteme(Fraunhofer ISE)は、2012年5月28日、ドイツの太陽光発電と風力発電の実績についての情報を公開した(図3)*1)。
*1) 2012年の太陽光発電と風力発電(Stromproduktion aus Solar- und Windenergie im Jahr 2012、ドイツ語PDF)
図3 ドイツにおける発電量の実績 2012年5月21〜27日の発電量の実績値を示した。縦軸は出力(10.000は10GWを表す)。太陽光発電(黄色)、風力発電(黄緑色)、その他(灰色)で色分けした。太陽光発電が電力需要の変動部分(ミドル供給力とピーク供給力)をうまく補っていることが分かる。なお、この1週間、太陽光発電の最大出力は22.4GW(発電量1.1TWh)、風力発電は9.1GW(0.65TWh)、その他は47GW(6.0TWh)である。出典:Fraunhofer ISE
ドイツでは、電力需要のピークを賄うために、太陽光発電と風力発電を組み合わせていることが分かる。原子力や石炭火力などはほぼ一定の出力で動かしている。同研究所が公開している過去1年間のデータを見ると、冬季は太陽光発電の出力が落ちる代わりに、風力発電が活躍し、夏季には逆の傾向があることも分かる。電力源を組み合わせて運用する手法は、再生可能エネルギーにおいても有効だ。
ドイツは2011年以降どうなる
ドイツの勢いは今後どれほど続くのだろうか。
200社以上の関連各社が加盟する太陽光発電システムに関する世界最大の業界団体European Photovoltaic Industry Association(EPIA)は、2012年5月に「Global Market Outlook for Photovoltaics until 2016」と題した太陽光発電に関するリポートを公開している*2)。同リポートは欧州を中心に太陽光発電の現状と2016年までの将来予測をまとめたものだ。
*2) EPIAの出版物ページからPDF形式の76ページのリポートをダウンロードできる。
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