エンジニアが英語を放棄できない「重大で深刻な事情」:「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(3)(5/6 ページ)
今回は、皆さんの英語に対する漠然とした見えない不安や、将来、海外に放り出される可能性を、「目に見える不安」、すなわち「数値(確率)」として、きっちり提示したいと思います。私たちエンジニアの逃げ道が全てふさがれていることは明らかです。腹をくくって「英語に愛されないエンジニア」として、海外で戦う覚悟を決めましょう。
英語を放棄できない事情とは、つまるところ……
海外に行かされることだけが問題なのではありません。日本にとどまっていても、私たちエンジニアが英語を放棄できない事情は存在しています。私は仕事柄、通信仕様書以外にも、半導体モジュールの仕様書を読むことがあるのですが、我が国に本社がある歴史の長いモジュールメーカーですら、日本語を差し置いて英語の仕様書とマニュアルしか作っていないと分ったとき、「おい、こら待て」と突っ込んでしまいました。「それは、あんまりじゃないか」と、一言文句を言いたかったです。
しかし、その企業が日本語版を作らなかった気持ちは、よく分かります。マニュアルの読者数が違い過ぎるのでしょう。先ほどの東・東南アジア市場の話に合わせれば、「35人中1人しか読まない仕様書なんぞ書いている時間あるか!最初から34人が読める方を書くわい!」と思うのは当然です。ある時など、後輩から英語で記載されたアナログ素子のスペック表を渡され、「日本語版はないのか」と泣きのメールを入れたら、「中国語版なら、後ろのページに添付されています」とのリプライが戻ってきました……。それが開発現場の現状なのです。
「インターネット上の情報の80%以上が英語」と言われているようですが、「技術分野に限れば、もっと高いはずだ」と思いました。念のため、ちょうど今、業務で調査中の標準化仕様書「IEC-61850シリーズ」をGoogleで調べてみたのですが、「99.6%」という絶望的な数値が出てきました。このような状況で「日本語の翻訳がないので仕事できません」が許されるなら、本当に幸せなことなのですが、そのようなことはこれまでもなく、そしてこれからもないでしょう。
さて、この他にも「あなたの上司が外国人になる可能性」*6)の試算も完了しておりますが、「英語を放棄することができない『重大で深刻な事情』」は、もう十分にご理解いただけたかと思います。今回はこの辺で終りにしたいと思います。
「私たち自身がエンジニアであること」それ自体
最後に、当然のことですが、「仕事で海外になんか行きたくないよ〜」と泣き叫ぶあなたを拉致して、成田空港に無理やりに連行することはできません。しかし、今回の冒頭で私が告白した暴挙を思い出して下さい。
「英語に愛されないエンジニア」であるこの私は、「英語」に対してやる気マンマンであった、あの前途有望な若いニイちゃんのチャンスを「潰した」のです。ましてや、「海外なんかに行きたくないよ〜」と泣き叫ぶあなたのチャンスを「潰す」という決断を下すのに、私は3秒も必要としません。
この話を聞いて青くなっているあなたも、いずれは、私と同じ数の地雷を踏み、数多くの失敗を重ね、会社に多大な損失を与え、そして自分自身をボロボロにしながら、私と同じサイドに立つことになります。なぜなら、私たちはエンジニアであるからです。 私たちエンジニアが英語を放棄できない「重大で深刻な事情」とは、つまるところ「私たち自身がエンジニアであること」それ自体なのです。
今回は、私たちエンジニアの逃げ道が全てふさがれていることを明らかにしました。もう諦めましょう。腹をくくって「英語に愛されないエンジニア」として、海外で戦う覚悟を決めましょう。大丈夫です。「英語に愛されないエンジニア」には、愛されないなりの闘い方があります。
次回(第4回)は、「英語に愛されないエンジニア」の皆さんに対して、そのマインドをリセットしていただくために幾つかのお話をする予定です。それでは皆さん、第4回でお会いしましょう。
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