Samsungの最新スマホ「GALAXY S III」を分解、クアッドコアのダイ写真も公開:製品解剖 スマートフォン(1/2 ページ)
NTTドコモが来週6月28日に日本国内で発売するSamsungの最新Androidスマートフォン「GALAXY S III」。これに先んじて5月末に欧州で発売された同機種を入手、分解した。本稿では、Samsungの自社製クアッドコアプロセッサ「Exynos Quad」のダイ写真や、メインボードの写真を公開する。
スマートフォン市場におけるSamsung Electronics(サムスン電子)のサクセスストーリーは実に興味深い。わずか3年前まで、同社は携帯電話機業界ではマイナーなメーカーだと見なされており、売上高でもブランド力でも、NokiaやMotorola Mobility、Research in Motion(RIM)に後れを取っていた。Appleが「iPhone」を発表して携帯電話機市場の競争に加わり、スマートフォンの売上高で首位を獲得するという大成功を収めた時も、業界関係者の多くは、Samsungが携帯電話機市場に影響を及ぼすような存在になるとは思いもしなかった。
Samsungは、自社が歩を進めているのが“険しい山道”だということを理解していた。しかし同社が選んだのは、白旗を振って携帯電話機市場から退散することではない。旧来の設計手法を捨て去るとともに、独り善がりに陥っていた研究開発モデルを即座に改めた。同社は、新たな携帯電話機を生み出すことに重点を置いて投資を行い、見た目の美しさだけでなく、競合製品が備えていない機能を搭載した、よりハイエンドな製品の開発を目指したのである。
その新たなアプローチから生まれたのが、Androidベースのスマートフォン「GALAXY」だ。特に、2010年に市場に投入した第1世代機「GALAXY S」は、ユーザーの支持を得ることに成功した。GALAXY Sの売り上げ台数は2400万台に迫る勢いだったが、今になって振り返れば、それもSamsungの快進撃の始まりにすぎなかった。市場調査会社である米国のGartnerによると、Samsungは2011年末にはAndroidスマートフォンの世界シェアの40%を獲得し、携帯電話機の販売台数で紛れもなく世界一の企業となった。
米国の技術情報誌「InformationWeek」によると、Samsungのスマートフォン売り上げ台数は、GALAXYシリーズだけで6000万台近くに上るという。その内訳は、「GALAXY S」が2400万台、「GALAXY S II(S2)」が2800万台で、2011年10月に欧州を皮切りに世界で発売した、スマートフォンとタブレットの両方の要素を兼ね備えるAndroid端末「GALAXY Note」が700万台となっている。
こうした経緯を考えれば、Samsungが世界各国で2012年5月29日に発売した最新のハイエンドスマートフォン「GALAXY S III(ギャラクシーS3)」が、消費者や設計者、エンジニア、市場アナリストの関心を集めるのは当然のことだろう。それでは、SamsungはGALAXY S IIIにどんな機能を盛り込んだのだろうか。
欧州向けの機種を入手して分解
筆者が所属するUBM TechInsightsは、欧州で発売されたGALAXY S IIIを購入した。この欧州版のGALAXY S IIIはクアッドコアプロセッサを搭載している。これに対し、後日、北米で発売される予定のGALAXY S IIIにはデュアルコアプロセッサが搭載されるという。Samsungはこの点について、「米国の4G/LTEネットワーク上で最高の性能を得るために、GALAXY S IIIを(その地域に合わせて)“最適化”した」と説明している。なおUBM TechInsightsは、米国のEE Times誌と同じくUnited Business Mediaの傘下にある技術情報サービス企業である。
欧州版GALAXY S IIIは、Samsung Electronicsが独自に開発したクアッドコアプロセッサ「Exynos 4212」を搭載している。このExynos 4212は、かつて「Exynos 4412」と呼ばれていたが、最終的にその名称は「Exynos Quad」に変更された。Samsung Electronicsによると、このプロセッサは32nm世代の半導体プロセス技術で製造されている。このプロセス技術は、Samsungが製造を請け負って、Appleが第3世代の「Apple TV」や第2世代の「iPad 2」で採用したAppleブランドの最新プロセッサ「A5」に近いものだという。この新型Exynosプロセッサは、4つのコア全てにパワーゲーティング技術を適用しており、各コアの未使用時の消費電力量を低減することが可能だとしている。
Samsung Electronicsがプロセッサを途中で切り替えるのは、今回が初めてではない。例えば、前世代機のGALAXY S IIは、リリース当時にはデュアルコアプロセッサ「Exynos 4210」を搭載していたが、その後Texas Instruments(TI)の「OMAP4430」に変更している。また米国市場で携帯電話キャリアのT-Mobile向けに供給するGALAXY S IIでは、Qualcommのデュアルコアプロセッサ「APQ8060」を採用した。
Samsung Electronicsが今回、欧州向けのGALAXY S IIIに採用したExynos Quadを調べたところ、PoP(Package on Package)技術を適用していることが確認できた。すなわち、プロセッサの上に、別パッケージに封止したLP(Low Power)DDR2対応の自社製1Gバイト(8Gビット)DRAM「K3PE7E700M」を重ねて搭載している。
このメモリのパッケージには「Green Memory」と刻印されているが、「Green」は消費電力が低いことを意味しており、製造技術を示しているのではない。パッケージを開けて調べたところ、GALAXY S IIが搭載するLP DDR2対応DRAMと同様に、このメモリチップも32nm世代の半導体プロセス技術で製造されていることが明らかになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.