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「MyDP」の登場で、携帯機器向け接続規格に新たな市場争い高速シリアルインタフェース技術

モバイル機器向けに新たな規格が誕生した。DisplayPortをベースとしたMyDPである。これにより、「MHL対MyDP」という新たな市場争い巻き起こるとみられている。

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 携帯端末に向けたHD(高品位)映像の伝送方式をめぐり、新たな競争が巻き起こっている。

 VESA(Video Electronics Standards Association)は2012年6月27日、携帯端末向けの規格「MyDP(Mobility DisplayPort)」を正式に策定したと発表した。これにより、Silicon Imageが開発したHDビデオの接続規格「MHL(Mobile High-definition Link)」に競合する規格が誕生したことになる。AnalogixがMyDPに対応したチップを製造する他、STMicroelectronicも同規格に準拠したチップの投入を予定しているという。また、モバイル機器向けアプリケーションプロセッサのベンダー各社は今後、MyDPをSoC(System on Chip)に適用していく見込みだ。

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 MyDPは、DisplayPort 1.2をベースとする。DisplayPort 1.2は現在、幅広い製品で採用されており、最大データ転送速度が5.4Gビット/秒、1920×1080画素(60Hz)の映像フォーマットをサポートし、24ビットカラー表示が可能だ。また、バージョン1.1aにも対応しているため、2.7Gビット/秒で720p映像もサポートする。

 接続による給電も可能なため、携帯電話機で映像を送信すると同時に充電することができる。また、携帯電話機で使用されている既存のマイクロUSBコネクタを採用している。

 Analogixは、MyDPに対応したブリッジチップを開発した。同チップは、モバイル機器向けアプリケーションプロセッサで採用されているHDMIにも接続が可能だという。同社のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるAndre Bouwer氏によれば、「1080p映像の伝送が可能な上に、トランスミッタとブリッジの両方を合わせた消費電力量は300mWにも満たない。それにもかかわらず、BOM(部材コスト)の増加は2米ドル未満に抑えた」という。

 Bouwer氏は、「今後数年間で、MyDPは携帯電話機やテレビ、ノートPCなどで採用が進むだろう。その他、メガビット/秒のサイドバンドチャネルを利用することで、キーボードやマウスとの接続にも利用されるようになる」と予測する。また、オーディオも扱える上、片眼当たり30Hzで1080pの3D表示をサポートすることに加え、既存のDVI(Digital Video Interface)やVGAに接続するためのアダプタにも対応する。

 VESAは、米国ネバダ州ラスベガスで2012年1月10〜13日に開催された「2012 International CES(Consumer Electronics Show)」において、MyDPについて説明した動画を披露している(動画はこちらから)。

 Silicon Imageは先日、「HDMIのモバイル機器向けバージョンであるMHLは、既に5000万個の機器に採用されている」と主張したばかりだ。例えば、HTCやLG Electronics、Samsung Electronicsをはじめとする十数社のベンダーの携帯電話機の他、LGやSamsung、シャープ、東芝などのテレビにも搭載されているという。MyDPは、こうしたさなかに登場した。MHLグループは、MediaTekやMStar Semiconductor、Texas Instruments(TI)、Qualcommなどの半導体メーカーによって構成されている。同グループによると、2012年におけるMHL対応機器の出荷台数は、1億台を上回る見込みだという。

 AnalogixのBouwer氏によると、MHLの仕様は当初、1080p/30Hzの映像をサポートし、消費電力量が約800mWだった。その上、接続による充電機能は搭載していなかったという。このため、2時間の映画を見終わらないうちに携帯端末の電池が切れてしまう可能性が高かった。ただし、MHLの広報担当者は、「そのような表現は正確ではない」と指摘している。MHL 1.0は、1080p/60Hz映像をサポートし、接続による充電にも対応可能だという。

 Silicon Imageは、2012年5月にMHL 2.0を発表した。1080p/60HzのフルHD映像をサポートし、消費電力量は約30mWと低い。また、接続による充電にも対応し、マイクロUSBコネクタもサポートするという。

 MHLとMyDPの闘いは始まったばかりだ。勝敗の行方は、モバイル機器向けアプリケーションプロセッサのメーカーが、どちらの規格を採用するかにかかっている。今後1〜2年の間に勝者が決まるとみられている。

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【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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