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―実践編(準備号)― 英語に愛されないことは私たちの責任ではない「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(4)(4/5 ページ)

「英会話は度胸」なんて言葉が氾濫しておりますが、英語が度胸でしか成立しないものであるなら、一体、私たちは青春時代の膨大な時間を費やして、何を学ばされてきたのでしょうか。

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第4の要因 「英語は度胸」という奇妙なキャッチフレーズ

 さて、冒頭の「英語は度胸」の話に戻りますが、今、このフレーズをGoogleで検索したら、ヒット数は「約 92,200 件(0.26 秒)」と出てきました。ところが、「英語は度胸」とブログに書いている人のほとんどが、外国に在住している商社マンや留学生、在留日本人です。そんな語学の環境に恵まれた人間が、「上から目線」で何を偉そうなことを言っていやがる、と、私は愉快ではありません。

 例えば、「スキーの経験のない人を、無理やり山頂までリフトに乗せて、頂上で置き去りにする」という行為を、「何事も度胸だ」とか言いながら正当化するのは、こういう人たちなのだ……と、今、暗い部屋の中で、一人、ぶつぶつとつぶやいています

 もちろん、このような人たちがGoogleの検索ヒット数である9万人以上もいるわけではないと思いますが、このような奇妙なキャッチフレーズが、英語の世界では支配的であることを示す証拠にはなっているでしょう。試しに、「数学は度胸」、「物理は度胸」、「国語は度胸」を検索してみたのですがヒット数はゼロでした。こんな言い回しが存在しているのは、「英語」だけです。

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写真はイメージです

 そもそも、「英語」が度胸でしか成立しないようなものであるなら、一体、私たちは、青春時代の膨大な時間を費やして、何を学ばされてきたのでしょうか。その落としどころが、「英語は度胸」では、泣くに泣けません。一体、文部科学省の皆さんは、どういうビジョンで我が国の英語教育を施策されてこられたのでしょうか。

 英語ができないことが私の「頭の出来具合」の責任ならそれでも結構です。それならそれで、最初からあんなむちゃくちゃな英語カリキュラムを、私にだけは課さないでほしかった。どうせ「英語に愛されない」のであれば、その英語の膨大な勉強時間に費やされてしまった、私の貴重な青春時代を返してほしいのです。

第5の要因 「自己啓発」に甘んじている企業の無責任な放置

 一方、企業は企業で、英語の重要性を叫ぶだけ叫んで、英語力の取得方法については、「自己啓発」に任せっきりです。それどころか、その費用や時間についても、完全にプライベートの問題として押しつけておいて、取得した能力は会社のために使わせています ―― これを「搾取」と呼ばずして、何と呼ぼう ?

 そもそも、英語をプライベートで使っている人って、どれくらいるのでしょうか。私には、「英語をプライベートで使う」という状況が想定できません。なんとか、「文通」や「メール」のやりとり程度は何とかイメージできますが、海外の掲示板への投稿、エッセイの寄稿を個人的に行っているという人の情報は、いらっしゃるのだろうと思うのですが、私には入ってきません。

 私の場合、趣味で開発しているソフトウェアについて、(ちょっとだけですけど)メールで議論をしたことはあります。ですが、それだって、どちらかというと業務と無関係とは言えないような気がします。大学のESS(English Speaking Society)や、英語ディベートのサークルの人は、英語を使ったプライベートの交流が日常なのかもしれませんが、このような特殊な例を除けば、「趣味」とか「社会、政治問題」とかで、個人的に英語で発言している人というのを聞いたことがありません(日常的にプライベートで海外の方とメールやTwitterを楽しんでいる方。インタビューさせていただきたいので、ぜひご連絡ください)。

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写真はイメージです

 どのような仕事であれ、必ずOJT(On the Job Training)と上司や指導員のサポートで、段階的かつ計画的に覚えていくものです。ところが私が知る限り、「英語を使った仕事」に関しては、このような体系的な教育が行われているという話を聞いたことがありません。英語取得が企業にとって必須であるなら、少なくとも毎週一日は、通常業務を完全にOFFにして、英語実習の日にするくらいの体制を組んでもよさそうなものです。

 連載第3回において、就労人口全体の「4%」しか使っていないビジネス英語が、エンジニアの業界では「17%」に跳ね上り、最悪で「59%」にまで至る可能性がある試算を紹介しました。これが事実であるなら、エンジニアの業界は、「個人の努力」や「自己啓発」などという悠長なことを言っていられる段階ではないはずです。「TOEIC XXX点以下は海外出張を禁止する」とかいうお触れを、社内に出している場合ではありません。そんなルールができたら、間違いなく若いエンジニアの皆さんは「大喜び」です。

 会社の幹部や管理職の方、まだ気付いていないのかもしれませんが、今の若い人たちは、「海外ではロクな目に遭わないこと」をよく分っているのです。リュックを背負って世界中を歩くことが「格好良かった」時代は、とっくの昔に終了しているのです。「いまだ見ぬ海外の地に立ちたい」などというロマンを持っている若者は絶対的少数です。

 「海外赴任」には、もはや魅力はなく、そんなものを餌にして英語能力の取得を「自己啓発」に導くような方法は、もう時代遅れなのです。

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