検索
連載

―実践編(準備号)― 英語に愛されないことは私たちの責任ではない「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(4)(5/5 ページ)

「英会話は度胸」なんて言葉が氾濫しておりますが、英語が度胸でしか成立しないものであるなら、一体、私たちは青春時代の膨大な時間を費やして、何を学ばされてきたのでしょうか。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

――と、ここまで記載したところで、編集担当さんから、「ちょっと待った!」が入りました。大変珍しいことです。「その論旨は、飛躍しすぎていないか」という異議と、幾つかの文献を示していただきました*1) *2)。そこで、私の席の半径15m以内の35歳以下のエンジニア(研究員)に協力を求めて、緊急インタビューを実施してみました。結果は、下図の図2図3の通りです。

図
図2 海外赴任(2年程度)の希望の有無に対するアンケート結果
図
図3 若手研究員の海外指向を可視化

 回答の1つにあった「秋葉原から遠くなる」を聞いた時に、「分かるよ。秋月電子通商*3)に行けなくなるもんね」と思ったのですが……彼の場合、「メイド喫茶*4)」の方だったのかもしれません。「AKB48」に続き「メイド喫茶」の国際展開も急がれます。

 また「攘夷(じょうい)」とは、夷人(外国人)を実力行使で打ち払う思想を言いますが、打ち払うどころか、我々自身が海外に追いやられてしまうという現実があります。残念ですが、彼の闘いは「始まる前から終っている」と言えましょう。

 それはさておき、今回のインタビューはサンプル数が少ないですが、全体としては、「無条件に海外に行きたい!」という勢いは小さいことが分かります。若手エンジニアに聞いて回ったのですが、「多分、若者の志向が、二極化しているのだと思いますよ」と言われました。残念ながら、この私と編集担当さんの論争は、今回では決着が出ませんでした。今後、読者の皆さんを交えて、この議論を続けていきたいと考えております。

エンジニアならではの行動論が別に存在

では、今回の連載の内容をまとめます。

結論:「英語に愛されない」ことは、私たちの責任ではない

理由:責任は、以下の5つの要因にある。

  1. 英語が使われない日本という環境
  2. 日本国内で英語が必要な人間の比率が小さいこと
  3. 英語教育者の資質と英語教材の内容の問題
  4. 「英語は度胸」という奇妙なキャッチフレーズ
  5. 「自己啓発」に甘んじている企業の無責任な放置

残件:若手エンジニアの海外志向の有無(読者の皆さんを含めて議論を続行)

 しかし、要因が5個あろうが100個あろうが、我々が「海外に追いやられる」という現実が消えてなくなるわけではありません。我々は、私たちの責任であろうがなかろうが、海外で闘うことを運命付けられたエンジニアです。逃げることはできません。とはいえ、これは「海外で英語を使いこなす」という意味と同じではありません。エンジニアならではの行動論は別に存在しています。

 大変長らくお待たせたしました。「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論「実践編」を、次回(第5回)より開始いたします。現段階で挙がっているキーワードを一部紹介しますと、「記号としての英語」、「ノンインタラクティブ プレゼンテーション」、「英語―図面等価変換方法」、「会議時間・内容スペクトラム拡散方式」などの文字が、私の汚い字でノートに書き殴られているのを確認することができます。どうぞ、お楽しみに。

脚注

*1)「内向き」「外向き」どっち? ビミョウな若者の海外志向(J-CAST会社ウォッチ)

*2)日本人の海外留学生数は増加!若者は内向き志向にあらず(東洋経済Online)

*3)秋月電子通商(Webサイト)

*4)秋葉原のメイド喫茶「@homeworld」(Webサイト)



本連載は、毎月1回公開予定です。アイティメディアIDの登録会員の皆さまは、下記のリンクから、公開時にメールでお知らせする「連載アラート」に登録できます。


Profile

江端智一(えばた ともいち) @Tomoichi_Ebata

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「江端さんのホームページ」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る