“上司VS若手”ではない:いまどきエンジニアの育て方(7)(1/2 ページ)
若手エンジニアというのは、野球選手に例えるならば、バッターボックスにも立っていない状態です。若手をバッターボックスに送り出すことは、ベテランにとって重要な仕事だといえるでしょう。また、若手が自らバッターボックスに向かうことも大切です。しかし、職場環境や社会環境の変化によって、“若手をバッターボックスに送り出すこと”や“若手が自発的にバッターボックスに向かうこと”が、厳しくなっているという現実があります。
第5回「若手の切り札“教わっていません”には、こう対処する!」と、第6回「まずはバッターボックスに立たせる! 若手のやる気を引き出す秘訣」の記事に関して、いくつか反響をいただきました。それを読むと、上司に対する不満の声が、やや目立っていた気がします。読者の皆さんが、自分の上司を思い浮かべたのかもしれませんし、本連載に登場する田中課長に対して「もっとしっかりしろ」といういら立ちを覚えたのかもしれません。
バッターボックスに立たせなかったわけではない
「教わっていないからできません」と答えた佐々木さんを叱った上司の田中課長。叱ることで、「エンジニアにとって、分からなければ調べる、自分で勉強するということは当たり前だ」ということを伝えたかったのです。自分の頭で考え、答えを導き出してほしいと願う親心もありました。
第1回で、田中課長は開発プロジェクトの主力メンバーに佐々木さんを起用しました。佐々木さんに一皮むける経験を積ませることが目的だったのですが、その意に反して、佐々木さんはなかなか自信が持てずにいます。一方、田中課長は、佐々木さんが「分かりません」ではなく「教わっていません」と言うことに腹立たしさを感じつつ、それがいまどき世代の防御本能からくるものだということが、分かってきました。
田中課長は、佐々木さんをバッターボックスに立たせようとしなかったわけでは決してありません。バッターボックスを用意しても、佐々木さんが立とうとしなかった、あるいはバッターボックスに向かおうとしなかったのです。
この原因は、上司に起因するものなのでしょうか、それとも若手に起因するものなのでしょうか。
バッターボックスに立たせること、向かわせること
若手に成長の機会を与えることと、自発性を持つよう促すことは、どちらも上司にとって大切な仕事です。成長の機会を与えるというのは、若手をバッターボックスに立たせること。自発性を持つよう促すというのは、上司に背中を押されなくとも自らの足でバッターボックスに向かうよう仕向ける、つまりは送り出すことだと言えます。
・バッターボックスに立たせること=成長の機会を与えること
・バッターボックスに向かわせること=内発的モチベーションを引き出すこと
第6回の最後で、田中課長は「自らのマネジメントスタイルも見直さなければならない」と反省しています。佐々木さんに対して、成長の機会は与えても、内発的モチベーションを引き出すことはできていなかったと気付いたわけです。
バッターボックスを用意するだけでなく、バッターボックスに向かわすための動機付けまで上司がしなければいけなくなったのは、果たして上司に原因があるのでしょうか。それとも、バッターボックスに向かおうとしない若手に原因があるのでしょうか。どちらかのせいにするのは簡単ですが、若手とベテラン勢それぞれに言い分があるはずです。
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