―実践編(パラダイムシフト)――技術英語はプログラミング言語である:「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(6)(3/4 ページ)
本来、「言語」とは「人間相互理解」の道具であり、「民族」という単位のポピュラーな指標であり、「文化」という荷物を過去から未来へ運ぶリヤカーのような役割もあります。しかし、「技術英語」には、そのいずれの機能もありません。「技術英語」が、言語でなく、「英語」の下位概念ですらないとすれば、それは一体何でしょうか。「技術英語」とは、「図」を構成要素とする「プログラミング言語」です。
さて、ここでは皆さんが技術英語に接する機会が最も多いであろう、リーディングについて、もう少し説明したいと思います。リーディングに関しては、さらに図が簡単になります。「A」がなくなって、「B」と「C」だけになり、「C」が受動態になるだけです。これは、技術英語の文章(仕様書、論文、特許明細書)は、主体が明らか(読者)であるからです。
例えば、要求仕様書の中で、「この部分はあなたの『上司』に検討してもらい」、「あの装置はあなたの『パートナー』に作ってもらい」、「この数値データの処理は、『部下』にやらせれば足りる」などと、そんなこと(主体)を、いちいち指定する必要がないからです(図5)。
つまり、どんなに長い文章であっても、2つの技術英単語を発見すれば足ります。「技術英語」という名のプログラミング言語は、表現力に乏しく、拡張性に欠けるという大欠点があるのですが、それは「英語に愛されないエンジニア」にとっては、神様の贈り物というくらいの恩恵なのです。では、具体例を示します(図6)。図6に引用しているフレーズは、机の上に置いてあった、あるシステムの国際標準化仕様書の適当なページから持ってきました。
この文章の概要が、「結果が文章化される」という内容であることは、簡単に理解できるはず ――― なのですが、ちょっとここだけは、断言することができないのです。膨大な英単語の中からこの2つの「B」と「C」を簡単に見つけられる人は、そもそも「英語に愛されている人」です。このような「B」と「C」を見つける能力がないからこそ、私たちは「英語に愛されないエンジニア」なのです。しかし、ここで、「たくさんの文章を読めば、分かるようになります」などという文脈で語ったら、私は読者の皆さんに殺されても文句は言えない、とまで思っています。
ですが、あんまり心配しなくて良いのです。95%以上の確率で、「B」は文章の最初に出てきた名詞で、「C」は最初に出会った動詞で間違っていません。技術英語は、レトリック(倒置法やら強調法やら)を使うことが忌避(きひ)されています。なぜなら、事象を客観的に記述できなくなるからです。
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