「HDDが壊れる」まで(後編):福田昭のストレージ通信(3)(1/2 ページ)
前編ではHDDがどれぐらい壊れやすいのか、「MTBF」の数値が何を意味しているかを説明した。HDDの一生は、初期故障期→偶発故障期(耐用年数)→摩耗故障期という3つの時期に分けられる。後編では、耐用年数がどの程度の期間続くのか、摩耗故障期には何が起こるのかを解説する。
MTBFとAFRの関係を振り返る
HDDの製品仕様である「平均故障間隔MTBF(Mean Time Between Failure)」と、「年間故障率AFR(Annualized Failure Rate)」が本質的には同じものであることを、前編で説明した(図1)。
高い信頼性をうたう最近のエンタープライズ用HDDでは、MTBFが200万時間に達している製品がある。この場合、年間を通じてノンストップで稼働させたときのAFRは0.44%となる。これは次の式から求められる。
AFR=1−exp(−年間稼働時間(8760時間)/MTBF)
偶発故障期の長さ
MTBFとAFRの考え方が通用するのは、偶発故障期(前編を参照)だけである。それでは、HDD製品が偶発故障期に留まる期間、つまり、故障率が最も低い期間はどのくらいあるのだろうか。一般的には、エンタープライズ用HDDが5年間、デスクトップPC用HDDが3年間とされている。これは保証期間で「ワランティ(Warranty)」として製品のデータシートに記述されている。この期間は、AFRの仕様を保証するという意味だ。
保証期間は設計余裕を見込んでいるので、実力は、もう少し長い。エンタープライズ用HDDで7年間、デスクトップPC用HDDで5年間といわれている。7年間とは6万1320時間、5年間とは4万3800時間である。MTBFに比べると、かなり短い印象を受ける。このことからも、MTBFよりもAFRで仕様を表記した方が、しっくりくる(図2)。
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