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インタビュー

技術の使い回しでは勝てない米International Rectifier 高橋敏男氏(3/5 ページ)

欧州、中国、インド、日本。これらの地域に共通する課題がある。機器の消費電力削減だ。欧州は省電力に関する法制化が進み、中国は政府によるインセンティブが実施されている。インドはやむにやまれぬ電力不足が背景にある。日本はいわずもがなだ。半導体企業ができることは何か。パワー半導体に取り組むほとんどの企業は「技術の使い回しが目立ち、問題解決の方向に向かっていない」――こう主張するのは米International Rectifierのベテラン技術者だ。

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顧客は対応できるのか

EETJ IPMの実装方法が面実装に変わると顧客が対応できないのではないか。熱シミュレーションツールなどを提供するのか。

高橋氏 そこは非常に苦労したところだ。顧客によってスタンスが違う。大手の顧客は面実装技術を社内で確立しようとする。ある程度当社が情報を提供すればよい。だが、中堅企業は違う。面実装技術が不足している。中国や台湾の顧客だと、実装して数回程度うまくいかないと結局採用されない。

 そこで2つの方策を顧客に提示している。1つは、アプリケーションノウハウという形でプリント基板を開発するところから、製造移管するまでに何をしなければならないかということを全てまとめた「バイブル」をNDAベースで提供している。バイブルの目的は単にIPMを面実装できるということではなく、顧客が安定して大量生産できるようにすることだ。

 例えばステンシルのデザインをどうしたらよいか、ステンシルの厚みがどれぐらいだと、開口率はこうなる……このような内容が詰まっている。ステンシルの設計は非常に重要だ。どれだけの量のはんだを盛るか。はんだが多過ぎるとアークが出て失敗する。少な過ぎるとボイドが出てしまう。基板の熱設計はもちろんだが、実装上の課題には全て最適解を示したものだ。

 もう1つは、当社の面実装IPMの製造ノウハウをもった製造ファウンダリーを紹介する。特定の台湾の大規模ファウンダリーを紹介できる。実際には多くのメーカーが製造ファウンダリーに製造委託する道を選んでいる。

どの技術開発が難しかったのか

EETJ これまで試みられていない面実装のIPMを開発するには時間がかかったはずだ。

高橋氏 EUの規制は予想しており、中国で恒常的に電力不足が起こっていることも分かっていた。そこで、規制などの実施を見込んで3年前から開発していた。実は予定よりも1年ほど開発が遅れた。

EETJ どこが難しかったのか。

高橋氏 μIPMは面実装パッケージとしては例外的に大きい。QFN(Quad Flat No lead package)としては業界最大の12mm角だ。これだけ大きいと、パッケージの強度が保てるか保てないかということになってくる。具体的に言うと、サイズが大きいため、当初はヒートショックテストや温度サイクルテストの後、必ずクラックができてしまった。ヒビが入る。内部には7つの素子が入っており均一でもない。

 μIPMのモールド樹脂の材質などが最も重要であり、一番の企業秘密だ。モールド樹脂の硬さをどうするのかという点が非常に重要だった。硬くしすぎるとクラックが入る。柔らかすぎると反ってしまうので、使い物にならなくなる。非常に苦労した。

 リードフレームも約0.2mmとかなり薄いので、そのまま使うとウェービングが起こり、めくれて製造できない。開発が1年遅れたのは信頼できるパッケージを大量生産するノウハウを確立するためだ。逆に基板への放熱設計については予定通り開発できた。

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