Amazonの「Kindle Fire HD」を分解、Apple・Google対抗の小型タブレット:製品解剖(1/3 ページ)
日本でも間もなく発売になるAmazonの新型タブレット。既に北米で販売が始まっている7インチ型のモデルを分解し、部品のベンダーやコスト構造を分析した。199ドルの売価に対し、部材コストは若干のマージンがありそうだ。ただ、同時に発表した初代機の改良版は価格が159ドルとさらに低く、マージンは見込めない。
その日、AmazonのCEO(最高経営責任者)であるJeff Bezos氏は、会場を埋め尽くした報道陣の前でステージに立ち、AppleやGoogleにとって大きな脅威となる新型タブレット端末「Kindle Fire HD」を発表した。2012年9月6日。それは、Amazonが同社初のタブレット端末「Kindle Fire」を発表してからほぼ1年後だった。
Amazonが約1年前の2011年9月28日に発表した初代機は、同社が誇る膨大なコンテンツとアプリケーションをユーザーに提供する低価格の端末であり、業界に大きな衝撃を与えた。初代機は199米ドルという価格設定によって、直ちにヒット商品になる。そしてAmazonは瞬く間に、消費者向けエレクトロニクス市場のプレーヤとして大きな存在感を放つようになった(参考記事:Amazonのタブレット「Kindle Fire」を分解、主要部品はTIや台湾企業が供給)。
そしてAmazonは今回、初代機であるKindle Fireの改良版を発表したにとどまらず、タブレット市場でAppleの「iPad」ファミリやGoogleの「Nexus 7」と真っ向から対抗し、同市場のプレーヤとしての地位をさらに確固たるものにすべく、Kindle Fire HDの3つのモデルを併せて発表したのである。
発表会でAmazonが最初に紹介したのはKindle Fireの改良版だった。初代機に比べてプロセッサの性能を高めたことが特徴である。やはり注目は、同社が次に発表した上位機種のKindle Fire HDファミリである。ディスプレイのサイズが7インチのモデルと、8.9インチのモデル、そして8.9インチでLTE方式の携帯電話通信に対応したモデルの3つを用意した。8.9インチモデルによって、AmazonはAppleの10.1インチ型iPadとも競合する形になる。
8.9インチモデルは、1920×1200画素の高解像度ディスプレイを採用。デュアルスピーカーの他、前面のHDカメラ、HDMI出力を備える。さらにKindle Fire HDは、Wi-Fi方式の無線接続に2.4GHz帯と5GHz帯の両方を利用することに加えて、タブレットとしては初めてMIMO技術を採用した。デュアルバンドとMIMO技術の相乗効果によって、Wi-Fi接続時のデータ転送速度が41%改善するという。
8.9インチのLTE対応モデルを用意したことは、タブレット市場で既に多くの機種が第4世代(4G)携帯電話通信に対応済みだということを考えれば、さほど驚くことではない。米国では通信事業者のAT&Tが、32Gバイトのクラウドストレージと月間で最大250Mバイトのデータ通信をまとめて、月額50米ドルの年間契約型サービスを提供している。このようなサービス内容のパッケージは、他の通信事業者でも前例がない。従って、Amazon以外のタブレットメーカーや、それら各社が米国において携帯電話の通信事業者と結ぶ契約にどのような影響を与えるかについては、現段階では不明である。
Kindle Fire HDのLTE対応モデルは、他のモデルに比べて発売時期がやや遅いため、当社(UBM TechInsights)は今回、7インチモデルを分解した。なお当社は、米EE Times誌と同じくUnited Business Mediaの傘下にある技術情報サービス企業である。
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