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Spansionが組み込み向けフラッシュ事業を加速、2年間で顧客数を倍増へビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)

NOR型フラッシュメモリ大手のSpansion(スパンション)は、3年ほど前から組み込み機器の市場にフォーカスした事業を展開してきた。高い信頼性と堅牢性を実現したフラッシュメモリ製品と技術サポート力で、さらなる顧客数の拡大を狙う。

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より多くの顧客に、より長く使ってもらう製品を提供

 スパンションは、自動車や産業機器向けのフラッシュメモリに特化したベンダーである。それだけに、供給能力と価格で競争するようなコモディティ製品を中核とした競合他社とは一線を画す。特定用途のメモリ事業を展開するためには、アプリケーション特有のサポート力とニーズを満たすための技術力が必要になる。そのために「ソフトウェアやファームウェアによって、メモリユーザーが抱えるいろいろな課題を解決していく」(キスパート氏)ことを基本的な戦略としている。

 一言で組み込み市場といっても、アプリケーションの幅は広い。現在、スパンションの顧客数は組み込み関連企業で8000社に達している。「今後2年間でその数を2倍に増やすことができると思っている。目標とする顧客数は1万5000〜2万社である。そのためにも、より多くの顧客に、より長く使ってもらう製品を提供していく」(キスパート氏)というのが同社の狙いの1つでもある。

 今後、フラッシュメモリ分野の成長を牽引する組み込みアプリケーションとして同社は、大きく5つの分野を挙げる。その1つはクラウドシステムでのデータ処理などに関連した産業で、その市場規模は2017年に500億米ドルに達するとみられている。複数の情報源を基に、情報の分析や意志決定までそのデータを活用することができる。これ以外にも、世界のモバイルゲーム市場は2015年までに75億米ドル、同じくソーシャルゲーム市場は40億米ドルと予想されている。自動車関連向けの需要も大きな伸びが見込まれる。先進運転支援システムは、2011年から2015年までの年平均成長率が70%と予測されている。

図2
主なデジタル製品の技術革新には高速、高信頼のメモリソリューションが不可欠になる。出典:スパンション

 キスパート氏は、「2005年のエレクトロニクス業界全体の市場規模は9100億米ドルだった。これに対して、2020年には2兆米ドルまで拡大すると予測されている。参考までに、自動車関連では1台当たりに搭載される半導体デバイスはこれまで300米ドルだった。それが2013年に発売される新車の場合、1000米ドルといわれている。わずか1年半で3倍以上に増えた。今後もその金額は倍増することが予想されている」と語り、組み込み市場において、事業機会が拡大していることに期待を寄せる。

 スパンションが考える製品と技術戦略の概略を下図に示す。ムーアの法則に基づき微細化のトレンドを追求すると同時に、差異化や付加価値を高める技術の追求にも取り組む。例えば、動作温度範囲の拡大など耐環境性への対応や、高速インタフェースのサポート、メモリとマイコンの統合、などである。製造プロセスの微細化だけでなく差異化への対応も同時に取り組むことで、多様な組み込み市場のニーズに応えていく。

図3
スパンションの製品と技術戦略である。出典:スパンション

 NAND型フラッシュメモリ製品についても、コモディティメモリを手掛ける競合他社とは異なる製品戦略を展開する。すなわちスパンションは、製品開発において高い性能と堅牢性を最優先で実現していく。2012年5月に発表したNAND製品はSLC(シングルレベルセル)を採用している(2012年5月24日付の和文ニュースリリース)。この製品の耐久性は10万サイクルを実現している。「プログラミング速度や読み出し速度が高く、データの信頼性も高いことから、デジタルテレビやシングルボードコンピュータ、ゲーム機器などの用途で受注に結びついた」(キスパート氏)という。一方、メモリの大容量化に力点を置く他のNAND型フラッシュメモリ・ベンダーは、1つのセルに複数のデータを格納できるMLC(マルチレベルセル)を採用していることが多い。MLCタイプのNAND型フラッシュメモリは大容量化に対応できる半面、SLCタイプに比べて耐久性が1桁以上小さいという。

 スパンションの今後の製品ロードマップを下図に示す。チップの製造に関しては、さまざまなパートナーと協力している。例えば、先端テクノロジーを使ったNOR型フラッシュメモリの生産では中国のWXICと手を結んでいる。NAND型フラッシュメモリの量産では韓国SK Hynixがパートナーである。NAND型フラッシュメモリの生産について、「今後は製造プロセスのさらなる微細化と供給能力の拡大に向けて、SK Hynix以外のファウンドリも検討していく」(キスパート氏)考えだ。チップのテストに関しては台湾のChipMOS Technologiesとパートナー契約を結んでいる。これらのパートナーシップにより、アセットライト(資産の軽量化)な経営環境を実現している。

図4
スパンションの製品ロードマップである。出典:スパンション

 組み込み市場にフォーカスし、差異化された製品やサービスを顧客に提供していくためには、優れたエンジニアによるサポート体制の充実も大きなカギとなる。スパンションは米国をはじめ欧州、日本、中国、韓国などにデザインセンターを設け、全世界で500人のエンジニアが活動している。この中にはアプリケーションエンジニアの他、システムエンジニア、ソフトウェアエンジニア、信頼性向上のためのエンジニアなどがいる。「自社と顧客のエンジニア同士が会話を交わすことで、顧客が抱えるメモリ関連の課題解決にあたる」(キスパート氏)という方針だ。

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