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英国政府らが、グラフェンの研究/開発に120億円以上を投資ビジネスニュース

英国政府らは、ケンブリッジ大学とマンチェスター大学がそれぞれ主導するグラフェンの研究開発施設に8500万ポンド(約120億円)を超える資金を投入する。グラフェンの早期実用化を目指す。

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 英国政府らは、グラフェンの実用化に向けて、ケンブリッジ大学とマンチェスター大学がそれぞれ主導するグラフェンの研究開発施設に8500万ポンド(約1億4000万米ドル)を超える資金を投入する。

 グラフェンは、炭素の2次元結晶である。グラファイト(黒鉛)を構成する原子1個分の厚さの層構造を持つ。シリコンと比べてはるかに強固なことに加え、軽量で柔軟性に優れ、電子移動度も高い。そのため、透明導電膜として利用することができる。“奇跡の材料”とも呼ばれており、エレクトロニクス分野やメカニカル分野などに大きなメリットをもたらすものとして期待されている。

 2010年に、「2次元材料であるグラフェンについて革新的な実験を行った」として、Andre Geim氏とKonstantin Novoselov氏がノーベル物理学賞を受賞した。両氏はロシアで研究キャリアをスタートしたが、現在はマンチェスター大学の教授を務めている。英国政府は2012年2月、「英国立グラフェン研究所における開発は、今後、マンチェスター大学が主導していく」と発表していた。

 ケンブリッジ大学は、英国政府および産業界から2500万ポンド(約4000万米ドル)の資金提供を受け、ケンブリッジグラフェンセンター(CGC:Cambridge Graphene Centre)を設立したと発表した。このCGCは、2013年2月1日から始動し、2013年末までにはグラフェンの研究/開発向けの専用施設へと移行していく予定だという。またCGCは、産学連携の推進を目標の1つに掲げている。そのため、最先端の設備を整え、それらをグラフェンの研究に取り組むすべての科学者が利用できるようにしようと考えている。


出典:University of Cambridge

 ケンブリッジ大学はこれまでに英国政府から1200万ポンド(約1900万米ドル)の資金を得ている。また、研究パートナーであるフィンランドNokiaや英Dyson、英Plastic Logic、オランダPhilips、英BAE Systemsなど20社以上のメーカーからも、合計で1300万ポンド(約2100万米ドル)の資金提供を受けている。

 CGC幹部の1人であるBill Milne教授は、「グラフェンは、非常に優れた特性を備えている。しかし現段階では、完璧な形状で大面積のものを製造することができない。そのため、まず最初の目標として、グラフェンの確固たる製造手法を開発したいと考えている」と述べた。あるプロジェクトでは、化学的な蒸着プロセスを利用する方法でグラフェンの製造に取り組んでいるという。

 CGCでは、フレキシブルエレクトロニクスやコネクティビティ、オプトエレクトロニクス、スーパーキャパシタ、バッテリなどの用途に向けた開発を専門とする研究者を集める予定だという。

 一方、マンチェスターの国立グラフェン研究所は、クリーンルームを2つ備える専用のラボを建設するために、6100万ポンド(約1億米ドル)の資金を調達する。このうち3800万ポンドは、英国政府から提供を受ける。残りの2300万ポンドについては、European Research and Development Fundに資金提供を申請しているところだという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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