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H.264の後続規格「HEVC」は、インターネットビデオ市場に変革を起こせるか?ビジネスニュース オピニオン(1/2 ページ)

2013年1月、高効率の映像圧縮方式であるHEVC(High Efficiency Video Coding)の規格がITUに承認された。このHEVCが普及するか否かは、AmazonやApple、Googleらが、同技術の“支援者”になってくれるかどうかにかかっている。

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 ITU(国際電気通信連合)は2013年1月、高効率の映像圧縮方式「HEVC(High Efficiency Video Coding)」の規格を承認した。このHEVCを、AmazonやApple、Google、オンラインDVDレンタルサービスを提供する米Netflixらが採用すれば、高精細(HD)の映画/テレビ番組を配信するインターネットビデオの市場が再生する可能性がある。

 HEVCは「H.265」とも呼ばれている。これを使用すれば、HD映像ファイルを従来の半分のサイズに圧縮できるという。そのため、データ伝送に必要な帯域幅が少なくて済む。HEVCの登場によって、インターネットビデオの世界はどのように変化するのだろうか。

 Andrew G. Setos氏は、オーディオ/ビジュアルの分野で豊富な経験を持つエンジニアだ。Appleのファンでもある同氏は、「例えばAppleは、HEVCを活用してインターネットビデオの市場を再生することができるだろう」と述べている。その上で同氏は、「HEVCの普及には“支援者”が必要になる。特に、iTunesやAmazon.comといった大手インターネットサービスの力が意味を持つ」と語った。


Andrew G. Setos氏

HEVC普及には、“支援”が必要

 映像圧縮技術の歴史を振り返ってみると、技術の大きな躍進の影には、その技術を利益に変えることのできる企業や製品が常に存在していた。

 例えば、DVDメーカーと衛星テレビ放送局は、MPEG-2をベースとして2つの巨大な映像産業を立ち上げた。これら2大勢力は、Blu-ray Discや衛星放送でコンテンツをサポートすることにより、「H.264」として知られるMPEG-4 Part 10を普及させている。

 このように見てみると、映像圧縮技術の普及には確かに支援者が必要であることが分かる。ここで言う「支援」とは、多額の資金を投じて優れたエンコーダを開発することだけを意味するのではない。低コストのデコーダの開発を手掛ける半導体メーカーなども巻き込んで、大規模な市場を開拓するということである。

 Setos氏は、「HEVCにとって今は好機だ」と指摘する。「自宅でインターネットの映像を見ようとすると、いつもイライラさせられる。メガバンドのデータプランに加入している10%のユーザー以外は、皆、同じことを感じているはずだ。無線で映像を伝送する場合には、さらにイライラは大きくなる」(同氏)からだ。

 例えば、Appleが発売するとうわさされている「iTV」にHEVCを採用したとしよう。その場合、iTVと関連するiTunesサービスにもHEVCが適用されることになる。結果として、ユーザーが高速にデータをダウンロードして円滑に視聴できるようにするために、優れた動画圧縮技術や映像再生技術の開発が進められると予想される。では、AmazonがHEVCを採用したら何が起きるだろうか。その場合、次世代の「Kindle Fire」と同社のオンラインビデオサービスの両方にHEVCが適用されると考えられる。Netflixのオンラインサービスや、米Rokuが提供するスティック型ストリーミング機器、あるいは大手民生機器メーカーのスマートテレビに採用された場合にも、同様の効果が期待できる。

 技術コンサルタントのBrad Hunt氏は、「消費者が目新しい映像技術に注目していることも確かだが、肝心なのは、HEVCの普及を後押しするような高品質の製品を開発することだ」と述べている。

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