H.264の後続規格「HEVC」は、インターネットビデオ市場に変革を起こせるか?:ビジネスニュース オピニオン(2/2 ページ)
2013年1月、高効率の映像圧縮方式であるHEVC(High Efficiency Video Coding)の規格がITUに承認された。このHEVCが普及するか否かは、AmazonやApple、Googleらが、同技術の“支援者”になってくれるかどうかにかかっている。
Googleと特許プールが重要な鍵に
HEVCに関して重要な役割を担うことになるのは、おそらくGoogleであろう。Setos氏は、「YouTubeは現状でも十分に楽しめるものだが、画質の良い映画やテレビ番組などのコンテンツを見る手段としては力不足だ」と述べている。Setos氏は、かつて米FOXの経営幹部を務めていたという経歴を持つ。その同氏によれば、現在Googleは自社専用の放送インフラなどを構築しているところだという。
Googleは、米カンザス州をはじめとする各地で無線通信プロバイダとして通信サービスを提供したり、自動走行車や、眼鏡型コンピュータの「Google Glass」、モバイルOSの開発を手掛けたりしている。Googleにとって、次世代のビデオ市場向けにHEVCを活用する余地は大いにあるだろう。
懸念は特許か
ただし、HEVCについては1つの懸念がある。それは、「HEVCの特許所有者が“横やり”を入れないだろうか」というものだ。H.264が成功したのは、それ自体が非常に優れた技術であることに加え、チップ当たり最大で25米セント、ベンダー当たりでも上限で約1200万米ドルという無理のないロイヤリティを支払うだけで利用できたからだ。
HEVCでもこれと同等のロイヤリティで済めば、誰もがインターネットビデオを快適に視聴できる環境になるかもしれない。しかし、この点については、現時点ではまだ何とも言えない。
また、MPEGに関する特許プール会社の米MPEG LAは、2012年6月に、HEVCの必須特許の募集について発表を行った。HEVCに関しては約500件の特許が存在するとされている。その中にはQualcommやSamsung Electronicsなど、比較的新規にMPEGの分野に参入した企業が所有する特許も数多くあるという。
MPEG LAの呼び掛けに対しては、これまでに24社が応じたようだ。諸条件に関する合意に向けて、2013年2月に第3回目の会合が開かれる予定である。
ただし、こうした取り組みが必ずしもうまくいくとは限らない。ある情報筋によると、「ある特許技術を自社のラボで使おうとしたところ、特許所有者が、その技術を適用したエンコーダを使用することに対して40万米ドルの支払いを要求してきた。実用化前の段階にデモを行うだけなのに、使用料を支払わなければならなかったのだ」とする声もある。
誰もがHEVCの特許プールに参加して利用できるようになるよう、幸運を祈るしかない。もしそれが無理だとしたら、あと数年間は、質の低いインターネットビデオとパワフルなMPEG-4ベースのケーブルテレビとの間で、何とか折り合いをつけるしかないだろう。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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