「モバイル機器向けワイヤレス給電の本格普及は2013年後半から」、IDTが見解:ワイヤレス給電技術
モバイル機器向けワイヤレス給電システムの市場が本格的に立ち上がる日は近い――。Integrated Device Technology(IDT)は、「対応するモバイル端末が投入された後、2013年後半から、コーヒーショップやファストフード店でモバイル機器向けのワイヤレス給電サービスが始まるなどインフラ整備が進む。地域的には米国や韓国などが先行しそうだ」と予測している。
Integrated Device Technology(IDT)は2013年3月4日、東京都内で会見を開き、モバイル機器のワイヤレス給電システム向けに提供している「ワイヤレスパワー製品」の事業展開などについて説明した。
米国調査会社のIHS iSuppliは、モバイル機器に搭載されるワイヤレス給電システムのトランスミッタやレシーバといったワイヤレスパワー製品の市場規模が、2015年に数量ベースで8億個、金額ベースで240億米ドルに達すると予測している。IDTでコーポレートマーケティング部門のバイスプレジデントを務めるGraham Robertson氏は、私見としながらも、「モバイル機器のワイヤレス給電システムの本格的な普及は、対応するモバイル端末の投入が先行した後、2013年後半からインフラ側でも体制が整ってきて進むだろう」と、今後の見通しを明らかにした。
米国や韓国においてコーヒーショップやファストフード店などが先行して、電磁誘導方式(MI:Magnetic Induction)のワイヤレス給電サービスを本格的に開始する見通しだ。さらにRobertson氏は、「2014年以降は磁気共鳴(MR:Magnetic Resonance)方式に移行するのではないか」と述べた。その背景として、IntelやQualcommをはじめ、PCやスマートフォンの仕様決定に強い影響力を持つ半導体メーカーが磁気共鳴方式の普及を推進していることや、送電コイルと受電コイルの位置ズレに対応しやすいといった磁気共鳴方式ならではの利便性などを挙げた。
現在、モバイル機器向けのワイヤレス給電システムとしては、2つの方式が提案されている。電磁誘導方式を用いたWPC(Wireless Power Consortium)のQi(チーと呼ばれる)規格、およびAlliance for Wireless Power(A4WP)やIntelなどが推進する磁気共鳴方式の規格である。
電磁誘導方式と磁気共鳴方式のワイヤレス給電システムにはそれぞれ一長一短がある。電磁誘導方式では、送電側と受電側に内蔵されたコイルの位置をうまく合致させることができれば、給電効率は70〜75%と比較的高い。一方で、送電側と接する部分に、ある程度の大きさを持ったコイルを内蔵しなければならず、受電側は機器を設計する上でスペースの制限を受けることもある。これに対して磁気共鳴方式は、規定の範囲内に充電したい機器があればよく、位置ズレを気にすることなく充電ができる。その分、機器を設計する上での自由度は高い。モバイル機器ユーザーにとっての利便性でも優れている。
IDTは、Qi規格をはじめとする電磁誘導方式に準拠したワイヤレス給電システム向けに、トランスミッタIC「IDTP9030」やレシーバIC「IDTP9020」を供給している。これらは、それぞれ主要な機能を1チップに集積したソリューションとなっている。また、受電側の機器を個別認識するための通信機能、送電側と受電側との間にある異物検出の機能なども備えている。IDTP9030とIDTP9020を組み合わせて使用すれば、給電効率は最大73%となる。
IDTP9030は主要な回路を1チップに集積しており、モジュールの小型化や信頼性を高めることができる。例えば、IDTP9030を搭載したモジュールは、外付けの受動部品点数が30個で済む。実装した基板面積も400mm2と比較的小さい。これに対して他社のトランスミッタICを用いた場合だと、IC9個と外付け受動部品が91個も必要となり、基板面積も1800mm2と大きい。Robertson氏は、主要回路の1チップ化を可能とした理由について、「アナログ、パワー、デジタルおよび電磁気に関する専門知識を有する技術者を社内に抱えている。その上、これらを統合できる技術を有しているので1チップ化を実現することができた」と述べた。
磁気共鳴方式に対応した製品も開発済みだ。2012年12月に、WPCのTx-A5仕様とTx-A11仕様に準拠したトランスミッタIC「IDTP9035」と、12V電源で動作する3コイル構成のシステムに対応できるWPCのTx-6仕様に準拠したトランスミッタIC「IDTP9036」を発表している。
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