“足かせ”だったST-Ericsson、親会社が解消に合意:ビジネスニュース 企業動向
STMicroelectronics(以下、ST)とEricssonが、両社の合弁会社であるST-Ericssonの解消に踏み切った。巨額の赤字を出し、STの“足かせ”とされていたST-Ericssonは、再建に取り組んでいたものの、経営不振から抜け出すすべが見つからなかったようだ。
STMicroelectronics(以下、ST)とEricssonは2013年3月18日、両社が折半出資する合弁会社であるST-Ericssonを解消することで合意した。2社は過去数カ月にわたり、この共同事業への“戦略的な解決策”を模索していた。
Ericssonは、2Gから4G(LTE)に対応するマルチモードモデム技術を引き取り、一方のSTは、既存のST-Ericsson製品(LTEマルチモード薄型モデムICを除く)と一部の組み立てラインおよびテスト施設を引き取る。
ST-Ericssonの従業員については、主にスウェーデン、ドイツ、インド、中国で勤務する1800人はEricssonが、フランスとイタリアで勤務する950人はSTが再雇用する予定だとしている。
ST-Ericssonの従業員数は約5000人だ。STとEricssonに再雇用される従業員以外は解雇される可能性もあり、そうなれば、今回の合弁事業解消によってST-Ericssonの約半数の従業員が職を失うことになる。同社は、現在の業務体制のリストラを行うと発表している。これにより、約1600人の従業員が影響を受ける可能性があるが、そのうち500〜700人は欧州で勤務しているという。
合弁会社の解消は、2013年第3四半期末までに完了する計画である。STは以前から、この期日までに何らかの解決策を実施するとしていた。合弁事業の移行期間中におけるST-Ericssonの事業運営費を含む現金支出とリストラ関連の費用は、STが受け持つ。これらの支出/費用は、2013年1月末に用意された5億米ドルをわずかに下回る、3億5000万〜4億5000万米ドルになる見込みだ。また、Ericsson側は、合弁解消によって生じる費用に充てるため、33億スウェーデン・クローナ(約5億米ドル)を準備している。
なお、ST-EricssonのCEO(最高経営責任者)を務めるDidier Lamouche氏は、既に退任を発表している。現在、同社のCOO(最高執行責任者)であるCarlo Ferro氏が、2013年4月1日付で新しいプレジデント兼CEOに就任する予定だ。
STは、「ST-Ericssonからの技術移管により、アプリケーションプロセッサ、RF、アナログおよびパワー半導体におけるSTの製造能力が強化されるほか、急速に成長するワイヤレス半導体市場への取り組みも強化できる」とコメントしている。
STのCEOであるCarlo Bozotti氏は、「合弁事業の解消により、ST-Ericssonの事業が保護され、STおよびST-Ericssonの双方の主要な顧客との関係が強化される」と語った。
【翻訳:山内幸代、編集:EE Times Japan】
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