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11インチ以上のタッチパネルコストを40%削減、最大40タッチや圧力検知も可能ディスプレイ技術 タッチパネル(1/2 ページ)

ドイツのアナログICベンダー・Dialog Semiconductorは、11インチ以上のタッチパネルの製造コストを、静電容量方式と比べて約40%低減できるタッチパネルドライバIC「SmartWave」を発表した。早ければ、2014年春モデルのノートPCなどに採用される見込みだ。

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マルチタッチ検出のデモ

 ドイツのアナログICベンダー・Dialog Semiconductor(以下、ダイアログ)は2013年3月19日、東京都内で会見を開き、11インチ以上のタッチパネルの製造コストを、静電容量方式と比べて約40%低減できるタッチパネルドライバIC「SmartWave(製品型番:DA8901)」を発表した。「Windows 8」を搭載するノートPCやオールインワンPC、11〜36インチのタッチパネルディスプレイ向けに展開する。ICのサンプル出荷は2013年中ごろ、量産出荷は2013年7〜9月期の予定。早ければ、2014年春モデルのノートPCやタッチパネルディスプレイに採用される見込みだという。

 現在、タッチパネルの方式として主流となっているのが、静電容量方式である。Appleの「iPhone」を皮切りに、スマートフォンやタブレット端末などに広く採用されるようになった。タッチパネル操作を主眼に置いて開発された、Windows 8を搭載するノートPCのタッチパネルにも静電容量方式が採用されている。

 これに対して、ダイアログで事業開発および企業戦略担当のバイスプレジデントであるMark Tyndall氏は、「MicrosoftやIntelは、マルチタッチ操作が可能なPCの市場拡大に注力している。しかし、ノートPCに用いるような11インチ以上のタッチパネルを、静電容量方式で製造すると高コストになるため、1000米ドル以上の高級機種にしか搭載できない。600米ドル以下のメインストリームのノートPCに搭載するには、11インチ以上のタッチパネルの価格を低減する必要がある。SmartWaveを使えば、その価格低減が可能になる」と語る。

左の写真は、ダイアログのMark Tyndall氏。右の図は、600米ドル以下のメインストリームPCにマルチタッチ操作が求められるようになることを示している。(クリックで拡大) 出典:Dialog Semiconductor

 例えば、11インチ以上のタッチパネルを静電容量方式で製造すると60米ドル以上になるという。SmartWaveの場合、14インチで42米ドル(1インチ当たり3米ドル)以下、23インチで92米ドル(1インチ当たり4米ドル)以下で済む。「静電容量方式と比べて40%以上のコスト削減が可能」(Tyndall氏)だという。

Intel出資ベンチャー企業の技術を独占ライセンス

 SmartWaveは、2007年に設立されたスウェーデンのベンチャー企業・FlatFrogが開発した光学式のマルチタッチ検出技術「PSD(Planar Scatter Detection)」を独占的にライセンスし、その駆動回路を集積したICである。FlatFrogは、Intelのベンチャーキャピタル部門のIntel Capitalが出資していることでも知られている。

 PSDでは、ディスプレイの表面を覆うカバーガラスの端から内部に入射した赤外線を用いてタッチ検出を行う。赤外線は、カバーガラスの内部を光導波路のように全反射しながら、入射部と逆側の端にある赤外線検出器まで進む。もし、カバーガラスの表面をタッチすると、タッチの影響によって赤外線の散乱が起こる。この赤外線の散乱からタッチ位置の検出が可能になるというわけだ。

左の図は、「PSD」によるタッチ検出の仕組みを示している。右の図は、「SmartWave(DA8901)」のブロックダイアグラムである。(クリックで拡大) 出典:Dialog Semiconductor

 SmartWaveは、赤外線LEDのドライバや、赤外線検出器から得られた信号をデジタル変換するA-Dコンバータ、このデジタル信号からタッチ位置を検出するための独自エンジンとARMのマイコン用プロセッサコア「Cortex-M0」などを集積している。SmartWaveによって処理されたデータは、外付けのタッチコントローラICに送信され、最終的にはPCのメインプロセッサに送られる。

 SmartWaveを用いたタッチパネルを製造する場合、タッチ検出機能を持たない一般的なディスプレイにも用いられている表面のカバーガラスとディスプレイパネルの間に、赤外線LEDや赤外線検出器、SmartWaveを実装した厚さ1.5mmのセンサーモジュールを組み込むだけでよい。センサーモジュールはディスプレイパネルの端部上側もしくは周辺に設置する。このため、額縁部がほとんど存在しない「ベゼルレス」のタッチパネルを実現しやすい。さらに、「静電容量方式で用いる透明電極層が不要なので、ディスプレイパネルの光学特性を100%引き出せるようになる」(Tyndall氏)という。

左の図は、「SmartWave」を用いたタッチパネルの構造である。右の図は、カバーガラスとディスプレイパネルの間に組み込むセンサーモジュールの外観。右下部には、センサーモジュールをディスプレイパネルの周辺に設置する場合の構造が示されている。(クリックで拡大) 出典:Dialog Semiconductor

 1個のSmartWaveで、赤外線LEDと赤外線検出器のペア12組を制御できる。14インチパネルの場合は60組のペアが必要になるので、SmartWaveを5個使用する。23インチパネルでは、約100組用いるので、ICは8〜10個必要になるという。タッチ解像度は最大400dpiで、Windows 8の要求仕様をはるかに超える高解像ディスプレイにも適用できる。同時にタッチ検出可能な数は40タッチまで。消費電力も、同サイズのタッチパネルであれば、静電容量方式と同等以下を確保している。

マルチタッチ検出のデモ
マルチタッチ検出のデモ。数人が両手を使って同時にタッチしてもそれを正確に検知できる(クリックで拡大) 出典:Dialog Semiconductor

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