ソニーは再び輝けるか、復活支える名機と一流技術(後編):フォトギャラリー(1/5 ページ)
リチウムイオン電池に近距離無線通信技術――。オーディオや映像以外でも、ソニーが先駆者となって切り開いてきた分野は多い。同社が持つ確かな基礎技術と、市場を生み出し、けん引してきたという実績は、ソニー復活の原動力となるのではないだろうか。
ソニーのテレビ事業が低迷していることや、液晶ディスプレイ(LCD)への爆発的な消費者需要を早い時期につかめなかったことは、この際考えないでおこう。ソニーウオッチャーは、テレビだけでなく業務用モニターにも使われる、同社の高度なディスプレイ技術に今でも信頼を置いている。
米国の市場調査会社であるEnvisioneering GroupのRichard Doherty氏は、「ソニーは、4Kディスプレイからプロジェクタのマイクロディスプレイまで、幅広いディスプレイ分野で際立っている」と述べる。同氏は、3Dヘッドマウントディスプレイや折り畳み型のタブレット端末、4Kプロジェクタを挙げた上で、「これらの製品分野において、ソニーは先駆者であり、商業的に先発している」と説明した。
こうした見解に、Sierra Mediaの創業者兼社長であるBrian Dipert氏も賛同している。Dipert氏は、「ソニーのテレビやコンピュータ用ディスプレイは、CRT時代から現在のLCD時代までの長きにわたり、その品質の高さで知られている。濃い黒、幅広い色表示、高解像度、高速のリフレッシュレートなどを実現してきた」とコメントした。
Dipert氏は、「ソニーの問題は、事実上全ての家電メーカー(Samsung Electronicsに始まり、今では中国の主要メーカー)が、ソニーよりも安く製品を売り、大きな市場シェアを得ているという点にある」と指摘する。それでは、ソニーに残された策はあるのだろうか。
そのヒントになるのが、2013年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された「2013 International CES」だろう。ソニーのブースを見ると、同社が有機ELディスプレイと4Kディスプレイの開発に積極的に取り組んでいることが分かる。
ソニーは2013 International CESで、世界初となる56型の4K対応有機ELテレビの試作品を披露した(関連記事:4K対応の56型有機ELテレビ、ソニーが試作機を披露)。台湾のAU Optronicsと共同開発した有機ELディスプレイには、酸化物半導体TFTと、ソニー独自の有機EL技術であるスーパートップエミッション方式が採用されている。ソニーはこのパネルの仕様や発売日を明らかにはせず、「新しい4K対応有機ELテレビの商用化を目標に、今後も有機EL技術の研究を続けていく」と言及するにとどめた。
有機ELディスプレイの開発をめぐる戦いがどのような結末を迎えるかは、まったく分からない。
実は、ソニーが有機ELテレビの開発に取り組むのはこれが初めてではない。同社は2007年に、世界初となる11型の有機ELテレビを発売した。だが、米国の市場調査会社であるIHS iSuppliによると、このテレビは、「画面サイズが小さく、極めて高価格だったことから、消費者に受け入れられなかった」という。
有機ELテレビ分野では、韓国のLG ElectronicsとSamsungが、現在提携関係にあるソニーとパナソニックよりも優勢であるとみられている。同分野に関して、IHS iSuppliが、2013年2月に気になる報告書を発表した。「有機ELテレビメーカーは、量産と低価格の実現に、今後も引き続き苦戦するだろう」というものだ。
IHS iSuppliは、2015年に170万台の有機ELテレビが出荷されると予測している。2013年の出荷台数の予測が1600台であることに比べると、大幅な増加である。それでも、「LCDの出荷台数に比べると、2015年までの有機ELテレビの出荷台数はほんのわずかにすぎない」(IHS iSuppli)という。
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