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かつての栄光を取り戻せ、“Apple以外”を狙う中国のファブレスビジネスニュース 企業動向(2/3 ページ)

かつて、中国でMP3プレーヤ向けチップベンダーとして名をはせていたActions Semiconductor。同社は、中国のファブレス半導体企業としては、最も古い歴史を持つメーカーの1つだ。MP3プレーヤ市場の縮小や社内のいざこざで、衰退してしまった時期もあったが、新しい経営体制の下、復活に向けて着実に歩んでいる。それを支えている戦略の1つが、“Apple以外のメーカー”を狙うというものだ。

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中国の“リビエラ海岸”だった珠海

 Actionsの取締役会長を務めるDavid Lee氏は、「珠海は、非常に環境に恵まれている。ヤシの木が立ち並ぶ長い湾岸道路が続き、温泉も数多く存在していることから、“中国のリビエラ海岸(フランス南部からイタリア北部のリグリア海沿岸)”として広く知られている。また、地方の人材を容易に獲得できるだけでなく、各地にアクセスしやすい」と述べる。さらに同氏は、冗談混じりに「珠海はマカオにも近いことから、1990年代は、香港のテレビ電波を受信することができる唯一の地域だったことでも有名だ」と付け加えた。

 Actionsは2001年に設立された企業だが、それ以前は、民間資金を調達して、玩具やゲーム用ICなどを専門に開発していた。しかし、同社が特に秀でていたのは、電力管理ユニットなどミックスドシグナル関連の技術だった。Zhou氏は、「ミックスドシグナル技術は、今も健在だ。われわれは最高のミックスドシグナル設計チームを持っており、ほとんどのIP(Intellectual Property)を自社開発している」と述べている。

 Actionsは2003年に、当時急速に成長していたMP3プレーヤ市場に参入した。PortalPlayerやSigmaTelなどのデジタルオーディオチップを手掛ける競合他社に、真っ向から勝負を挑んだのである。PortalPlayerが、Appleの「iPod」のデザインウィンを獲得することで事業を構築する一方、Actionsは、中国に拠点を置いているメリットをうまく活用し、Appleとは無関係の市場に参入していった。当時の中国は、著しい成長を遂げる消費者市場を抱えていただけでなく、“世界の工場”としての地位を固め、デジタルミュージックプレーヤを低コストで量産し、世界各国に供給できる態勢を整えていた。

 Lee氏は、「当時の珠海では、小規模ながらも100社以上のメーカーがMP3プレーヤの製造を手掛けており、これらのMP3プレーヤを購入するエンドユーザーの80〜90%が深センに住んでいた。珠海から深センまでは、フェリーでわずか1時間半の距離である」と説明する。当時、MP3プレーヤ向けの販売チャネルは急速に拡大しており、Actionsはまさにその真っただ中にいた。

過酷な民生機器市場

 Actionsは2005年11月、米国のNASDAQに上場した。これを境にActionsは、民生機器市場の厳しさを学ぶことになる。Zhou氏は、「半導体メーカーが消費者市場において生き残るためには、業界ナンバーワンの座を勝ち取らなければならない。莫大(ばくだい)な富を得られるのは、トッププレーヤの企業だけだ。2位であればそこそこの利益を上げられるが、3位では苦境に陥ることになる」と述べる。

 Actionsは、Apple以外のMP3プレーヤ市場において優位性を確保した。しかし間もなく、「Actionsは、“取り柄が1つしかない中国のファブレス企業”の代表格」とからかわれる立場となっていった。

内紛

 株式を公開して以降、利益の分配に関してActionsの社内で“内輪もめ”が起こった。それが原因で、2007年までに、同社のシニアエンジニアの実に7割が会社を去っている。Lee氏は「Actionsの技術力が、数年分後退してしまった」と振り返る。さらに悪いことには、Actionsを辞めたエンジニアが、Allwinnerというライバル会社を設立したのだ。AllwinnerのエンジニアはActionsで得た技術力を基に、タブレット端末という新しい市場に乗り出していった。

 Actionsも、タブレット端末に至るまでの事業展開は、早い段階から視野に入れていたという。だが、実際には、2011年後半にZhou氏がCEOに就任するまで、具体的な行動に移ることはなかった。

 Zhou氏は、Actionsが2010年に買収したMavrix Technologyの設立者である。Mavrix Technologyは、モバイルテレビ向けSoCを手掛ける新興企業だった。Actionsに買収されたあと、Zhou氏はシニアバイスプレジデントに就任、上海でタブレット端末の研究開発部門の指揮を執っていた。

 Lee氏は2011年の前半を振り返り、「当時、Actionsの取締役会は、変化の遅い、古めかしい社風にうんざりしていた。そこで、まずは会社のトップから変えてしまおうという結論に至った」と語る。Actionsは、“理想的なCEO”としてZhou氏に白羽の矢を立てた。複数の米国企業で、幹部として勤務した経験を買ったのである。Zhou氏は、ビデオ/オーディオ製品向けのチップなどを手掛けるESS Technologyで幹部を務めていた。また、ホームネットワーキングを手掛けるNetRidium Communications(後にESS Technologyが買収)の設立者兼CEOでもあった。


珠海にあるActionsの本社

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