サイプレス、PSoCの次期主力製品の量産を開始:ビジネスニュース 企業動向
サイプレスは、プログラマブルSoC「PSoC」のボリュームゾーン向け新製品「PSoC 4」の量産を開始したと発表した。CPUコアに「ARM Cortex-M0」を搭載した製品であり「今後のPSoCの主力を担う基幹製品」と位置付け、8ビット/16ビットクラスのマイコンに対抗した拡販活動などを展開していく。
米Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は2013年4月24日(米国時間)、プログラマブルなSoC(System on Chip)「PSoC」の新しい製品群「PSoC 4」の量産を開始したと発表した。同社の日本法人、日本サイプレスの社長を務める山田和美氏は、「これまで(PSoCシリーズで)最も市場に出回っているPSoC 1に代わって、PSoCの主力を担う基幹製品。PSoC 1と同等の価格ながら高い性能と低い消費電力が実現でき、PSoCの普及加速が狙える」と期待を寄せる。
PSoCは、8年前に製品化されたサイプレス独自のデバイスだ。マイコン、メモリーにプログラマブルなロジックとプログラマブルなアナログを1チップに統合したSoCであり、同社は「プログラマブルSoC」という独自の製品ジャンルを打ち出す。
このPSoCの最大の用途は、タッチパネルコントローラーの分野だ。タッチパネルごとにアナログフロントエンド(AFE)と呼ばれる信号処理用アナログ回路を最適化する必要がある中で、ソフトウェアでアナログ回路の構成、特性を簡単に変更、調整できるPSoCの利点が重宝され、多くのスマートフォン/タブレット端末のタッチパネルコントローラーとしてPSoCの技術が使われている。タッチパネル以外にも、プログラマブルなロジック、アナログを搭載できるマイコンとして白物家電をはじめ、産業機器などの分野で採用を増やしている。
PSoCは、搭載するCPUコア別にファミリ展開されている。8年前に登場した初代の「PSoC 1」は、独自の8ビットコア「M8C」を搭載し、続いて、PSoC3として8ビットコア「8051」搭載シリーズを投入。さらにマイコンのCPUコアとして主流となりつつある32ビットのARMコア(Cortex-M3)を搭載した「PSoC 5」を製品化した。「今後は、ソフトウェアの流用性や製品間のシームレスな移管を実現するため、PSoCはARMベースで開発する」との方針を打ち出し、今回「ARM Cortex-M0」を搭載するPSoC 4を製品化した。
PSoC 4の位置付けは、PSoCの各ファミリで最も出荷数量が多い「PSoC 1」の後継製品群であり、8ビット/16ビットクラスの汎用マイコンが使用されるボリュームゾーンを狙う。具体的には、白物家電や電池駆動のセンサー端末などであり「低コスト要求の強い分野に対応できる製品ファミリ」として、機能、性能を最適化している。
PSoC 4では、低コスト要求に応えるため、ユーザーロジックが搭載できる「UDB」と呼ぶプログラマブルデジタルブロック非搭載の4100ファミリをラインアップ。UDB搭載品の4200ファミリも、搭載UDB数はロジックゲート換算で500ゲート程度となる2個から4個程度であり、UDBを20個以上搭載するPSoC 3などと差異化している。
一方で、PSoCが得意とし、家電などの入力デバイスとして使用が増える「静電容量式ボタン」のタッチ検出が行える「CapSense」回路を標準機能として搭載。電池駆動機器などへの対応強化として、新たな低電力動作モードを追加。I/Oピンからのウェークアップ機能を残し、それ以外の機能は休止させる新モード「ストップモード」は、消費電流を20nAに抑えることができるという。12ビット分解能の高速A-Dコンバータの他、プログラマブルなアナログ回路のベースとして複数のコンパレータ、オペアンプも備える。
PSoCの大きな特徴でもある、プログラマブルなアナログ部をGUIの操作で簡単に開発できる設計ツールもPSoC 3、PSoC 5と同じ「PSoC Creator」が利用可能。同ツール内には、動作検証済みのコンポーネント(回路構成要素)が100個以上用意され、コンポーネントの選択、組み合わせで多くのアナログ回路を開発できるようになっている。さらに開発評価用ボードとしても、25米ドルという低価格設定の「PSoC 4 Pioneer Kit」(型番:CY8CKIT-042)も発売している。
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