ルネサス、8四半期ぶりに営業黒字達成も再建策は「まだ」:ビジネスニュース 企業動向
ルネサス エレクトロニクスは2013年5月9日、2012年度(2013年3月期)決算を発表した。第4四半期(2013年1〜3月期)は、8四半期ぶりとなる四半期ベースでの営業黒字を達成した。再建に向け光明が少し見え始めるも、2013年度の業績見通しや具体的な再建策については、「まだ策定中」(ルネサス社長)として公表しなかった。
ルネサス エレクトロニクスの2012年度(2013年3月期)通期決算は、売上高が7858億円で前年度比7.9%減。報道機関向けに会見した社長の鶴丸哲哉氏は「世界的な市況停滞の継続などにより減収となった」とした。営業損益は、費用削減策の効果で前年度に比べ335億円改善したが232億円の赤字が残り、最終損益は構造改革費用1271億円の計上が響いて1676億円の赤字と前年度より1050億円悪化した。鶴丸氏は「2012年度の業績は多くのステークホルダーに対し、大変申し訳ない結果となった。深くおわびする」と頭を下げた。
一方で、2012年度第4四半期(2013年1〜3月期)の業績は、製造固定費など原価改善や円安効果などにより、2010年度第4半期以来8四半期ぶりとなる営業黒字(80億円)を計上。その結果、下期(2012年10〜2013年3月)の営業損益も1億円の黒字を達成した。
事業別の2012年度通期業績をみると、主力のマイコン事業売上高は前年度比9.3%の減収。車載向けマイコンの売上高はほぼ前年度並みを確保したが、産業機器や民生機器向けの汎用マイコンが前年度比15%減と落ち込んだ。鶴丸氏は「2年前から振り返ると、マイコンでシェアを失った部分もある。車載、産業機器向けは強い位置にいるが、民生機器などに向けた汎用のところでシェアを失った。今後は強力に奪い返しに行きたい」とした。
アナログ&パワー半導体(A&P)事業売上高も、車載向けが堅調ながら産業機器、民生機器向けが不振で前年度比3.5%減の減収となった。SoC(System on Chip)事業売上高は、従来型携帯電話向けで大きく落ち込み、テレビ向けなど一部事業の縮小もあり前年度比13.7%減と大きな減収となった。
今期である2013年度の業績予想は、既に発表している官民ファンドの産業革新機構や顧客企業8社からの第三者割当増資による出資(関連記事)を控えていることから「出資が完了するまでは、公表を差し控えたい」とし開示しなかった。出資の時期についても「答える立場にない」とした。
さらに、今後の具体的な再建策についても「まだ策定中」とし、策定状況については「再建策、成長戦略の前にまず、これまでのルネサスが何をしてきたかを振り返ることが重要だ。振り返って反省すべきは反省し、学ぶべきことは学ばなければならない。加えて競合他社からも学ぶところはあり、ベンチマークもきっちりして、再建に向けた中期プランを作っていきたい」と述べた。
ルネサスは同日、現オムロン会長の作田久男氏が6月の株主総会、臨時取締役会後に代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任する人事を公表した(関連記事)。鶴丸氏は社長にとどまり、COO(最高執行責任者)を兼ねる。作田氏について鶴丸氏は「経営者として、知識が豊富で、力量も素晴らしい方。私の至らないところをカバーしてもらえるだろう。これからは(作田氏の)判断を仰ぎながらやっていく。私自身、大きな勇気をもらったと思う」と述べたもののCEOとCOOの役割分担については「これから決める」にとどめた。
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