アルテラが電源IC事業に参入、自社FPGAに最適な電源ICを開発/販売へ:ビジネスニュース 企業動向
アルテラは、電源ICメーカーのエンピリオンを買収する。アルテラは今後、自社FPGAに最適な電源ICを自社で開発し、FPGAとともに販売することになった。
アルテラは、電源ICメーカーのエンピリオン(Enpirion)を買収すると発表した。これにより、アルテラは、自社FPGAに最適な電源ICを自社で開発し、FPGAとともに販売する新たなビジネスに乗り出す。
アルテラが買収するエンピリオンは、ファブレスの電源ICメーカーであり、FPGAのIPベンダーや開発ツールベンダーではない。2001年に設立し、FPGAやCPUといった先端デバイス用のDC-DCコンバータに特化した事業を展開してきた。今回の買収により、アルテラはFPGAだけでなく、電源ICという半導体デバイスも開発、販売するメーカーとなる。
FPGA電源の複雑化への対応
エンピリオンの買収の背景には、FPGAに電力を供給する電源回路部の設計の高度化、複雑化がある。FPGAは、微細製造プロセスの採用などにより、低電圧/大電流駆動となっている。28nmプロセス技術を使った最新FPGAでは、0.8Vという低電圧を±5%という高い精度で供給する必要がある。そのため、電源回路部の設計は、高いアナログ技術を要し、先端FPGAを使用するためには苦労して乗り越えなければならない大きな障壁となっていた。
「FPGAユーザーにとって電源は、差異化要素ではない。貴重な設計リソースを電源以外の部分に充ててもらえるような環境を作ることはFPGAメーカーの使命」(日本アルテラマーケティング部長の堀内伸郎氏)とエンピリオン買収の理由を説明する。
果たして、FPGAに最適な電源を供給できるのか?
しかし、「FPGA向け電源ICは高度な技術が必要であり、決して電源ICでシェアが高いわけではないエンピリオンの買収でFPGAに最も適した電源ICの供給が可能になるのだろうか」という疑問が湧く。この疑問に対し、堀内氏は「エンピリオンは高い技術力を持ち、最適なFPGA向け電源の供給は可能だ。従来から地元米国を中心にエンピリオンの高集積型電源『PowerSoC』への評価は高かった。しかし、若い企業であり、これまで企業としての信用が十分でなかったため、技術力に比べシェアが低かった。アルテラが買収することで信用リスクも減り、エンピリオン製品を安心して使用してもらえるようになる」と説明する。
エンピリオンの展開する電源製品PowerSoCとは、DC-DCコンバータパッケージ内にインダクタを内蔵するデバイスで、3〜4個程度の外付け部品でFPGA用電源回路を構成できるという特徴がある。加えて、高速スイッチング動作を実現する独自MOSFET技術も持ち、「業界最小の実装面積で、電源を構成できる」という。これまでの製品ラインアップ数は60品種を数え、入力電圧範囲で1.2〜20Vに対応。最大15A出力で、4つの並列動作に対応する大電流対応品もそろう。累計出荷実績は、「100万個以上で日本国内でも採用実績がある」という。
アルテラでは買収後、1事業部としてエンピリオンの電源IC事業を展開し、PowerSoC製品の強化を図っていく方針。同時に、アルテラが提供するFPGAの各種開発ツールで、アルテラで検証済みのPowerSoC製品を選択できる開発環境や検証済みの電源回路図やガーバーデータなどを提供できる体制作りを実施し「検証済みでターンキー型の電源ソリューションを提供する」という。
アナログ半導体メーカーと競合も「パートナー関係は継続」
これまでFPGA向けにも電源ICを展開してきた多くのアナログ半導体メーカーと関係について堀内氏は、「FPGAユーザーにより利便性の高い環境を提供する体制を目指した結果だが、(アナログ半導体メーカーと)競合する部分が生じるのは事実だ。しかし、われわれだけで、高電圧対応品や大電流電流品をすべて対応することは不可能。従来通り、アナログ半導体メーカーとのパートナー関係は継続、強化していく」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- シリコンコンバージェンスを可能とするアルテラSoC、開発環境も整う
FPGAベースの設計手法は、設計の柔軟性を確保しつつ最先端プロセス技術を活用できることから注目を集めている。こうした中で「シリコンコンバージェンス」を提唱しているアルテラは、最先端FPGA技術をベースとしたSoC設計を推進している。 - アルテラが車載分野への本格展開を宣言、年率20%以上の売上高成長を見込む
FPGAベンダー大手のアルテラが、日本市場での車載展開を本格化させる。日本アルテラ社長の日隈寛和氏は、「車載分野専任の営業、技術サポート、マーケティングなどの人員がそろい、販売代理店としっかり連携できる体制がついに整った。これからは車載分野で積極的に展開を進めていく」と宣言した。 - デジタルで電源をカンタンに
アナログICの中堅メーカーであるIntersilは今、「注力する10の製品分野」の1つに、デジタル電源制御技術を掲げている。社長兼CEOのDavid B. Bell氏は、かつて電源IC大手のLinear Technologyで社長を務め、同技術にも造詣が深い。来日の機会に、デジタル電源の現状と展望を聞いた。