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オールジャパンで挑む固体水素源型燃料電池の実用化エネルギー技術 燃料電池

ロームと燃料電池開発ベンチャーのアクアフェアリー、京都大学は、固体水素源を用いた燃料電池の実用化に向けた実証試験を開始すると発表した。国内企業から成る開発アライアンスを構成し、同燃料電池を使った非常用電源装置のプロトタイプ機を2013年秋に製作する予定。その後、京都市など自治体の協力を得て、実証試験を行い、2015年の事業化を目指す。

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 実用化を目指すのは2012年9月に発表した固体水素源型燃料電池システム。水をかけるだけで水素が発生する固体「水素化カルシウム」(CaH2)を樹脂で固めたカートリッジを水素発生源に使用する独自の燃料電池システムである。従来の携帯用電源と比べ、軽量、高効率、長寿命、長期間保管が可能で、環境負荷が少ないといった特徴を持つ(関連記事:ガム1枚でスマホが満腹、つぶつぶカルシウムが効く)。


実証試験の体制 (クリックで拡大)

 ローム、アクアフェアリー、京都大学の3者は2012年9月の発表以来、国内外での市場調査を実施した。その結果、「25カ国、100以上のユーザーから反響を得た。その結果、数百Wクラスの電源としての応用を期待する声が多く、特に日本では、災害時などに使用する緊急電源としての期待が大きかった」(ローム研究開発本部副本部長を務める神澤公氏)とし、発表当初に応用先として想定していたスマートフォンなどのモバイル機器向け電源に加えて、非常用電源装置での早期実用化を図ることになった。

 そこで、ロームとアクアフェアリーの2社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「課題設定型産業技術開発費助成金」に、実証試験計画の申請を行い、このほどNEDOから採択を得て、今後2年間にわたり、実証試験を実施することに至った。


開発アライアンスのイメージ (クリックで拡大)

 実証試験の実施、早期事業化に向けて、燃料電池システムを製造するために必要な部材供給体制や製造技術を確立する開発アライアンスを結成した。参加メンバーは、東洋製罐、東洋エアゾール工業といった燃料ユニット製造に関わる企業の他、試作品の早期製造サービスを行う企業グループ「京都試作ネット」や工業デザイナー、大手材料メーカーなどで、「実用化に向けてオールジャパンで製造できる体制が整った」(神澤氏)。

2013年秋にプロトタイプ機を製作


実証試験に使用する緊急用電源装置のプロトタイプ機のイメージ (クリックで拡大)

 この開発アライアンスメンバーで、実証試験に使用する緊急用電源装置のプロトタイプ機を2013年秋をメドに製作する。プロトタイプ機は、100W出力の燃料電池の他、最大300W出力の二次電池を搭載し合計400W出力、出力容量200Whとなる見込み。装置の重量は、6〜7kgを予定し、「片手でも運べる」(神澤氏)という。出力も、AC100V、USB出力(DC5V)、DC24Vの3タイプから選択できるようにする。その他、複数の装置を連結し大出力を実現する並列運転機能なども備える予定だ。

 プロトタイプ機を製作後、京都府、三重県、秋田県、島根県、京都市など自治体の協力を得て、災害時の緊急電源としての有用性、費用対効果、改善点などを確認し、「2015年を目標に商用化を進める」(神澤氏)としている。

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