やはり過酷なスマホ市場、NECは撤退か:ビジネスニュース オピニオン
一部の報道によれば、NECがスマートフォン事業から撤退するという。真偽の程は定かではないが、頼みの綱であるLenovoとの提携交渉が暗礁に乗り上げたようだ。スマートフォン市場は今後も成長が見込まれているが、先進国では飽和状態に近いとも言われている。スマートフォンメーカー各社が、厳しい戦いを強いられているのは確かである。
NECがスマートフォン事業から撤退すると、一部報道機関が報じている。
報道によると、NECは2012年から、中国のLenovoとの間で提携契約に向けて協議を進めていたが、条件面で折り合いがつかずに断念したという。NECは、かつてPC分野で協業関係を結んだLenovoに再びリーダーシップを執ってもらい、携帯電話事業の拡大を図ろうとしたようだ。
Lenovoは、2010年に携帯電話機市場に参入したばかりだ。しかし同社は、中国市場において、HuaweiやZTE、Coolpadなどの競合メーカーと既に互角に渡り合っている。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliは2013年7月17日、スマートフォン市場に関する最新リポートの中で、世界スマートフォン出荷台数が、2012年の7億1200万台から2017年には15億台に達する見込みであると発表した。同市場をけん引するのはAppleとSamsung Electronicsだが、今は中国の新興メーカーが数多く台頭している。
別の市場調査会社であるStrategy Analyticsが発表したデータによると、Samsungは2013年3月31日を末日とする第1四半期において、中国市場でのスマートフォン販売台数が1250万台に達し、2012年第4四半期比2.2%増となる18.5%のシェアを獲得したという。一方のLenovoは、2013年第1四半期におけるスマートフォン販売台数が790万台で、中国でのシェアが11.7%だった。Huaweiはシェア12%を獲得し、Lenovoを僅差で上回っている。Lenovoは、中国のスマートフォンメーカーとしては第2位の座を得ていることになる。
米国市場への参入を狙うLenovo
Lenovoは現在、中国やインド、東南アジアに注力しているが、いずれは米国市場において自社ブランドを確立したいという野心を抱いている。一部の観測筋によると、LenovoはBlackBerryの買収を検討している可能性もあるという。
このようなLenovoにとって、米国内での存在感がほとんどないNECと協業関係を構築しても、大してメリットが期待できないのは明らかだ。
また、Lenovoの野心は、単にスマートフォンメーカーとしての地位を確立することだけにとどまらない。スマートフォンやタブレット端末向けのIC設計事業に参入する意思も示している。
いずれにしても、NECがSoC(System on Chip)分野において誇ってきた優れた専門技術(現在は、経営難にあえぐルネサス エレクトロニクスが所有している)や、NTTドコモとの連携により培ってきた日本市場での実績は、Lenovoにとって魅力があるとは言い難いのだろう。
スマートフォン市場が飽和状態になりつつある先進国では、携帯電話機メーカー各社の競争は激化する一方だ。NECは、日本国内のスマートフォン市場において競争力を失いつつあり、Lenovoをはじめとするあらゆる企業に対し、パートナー企業としての自社の魅力をアピールできなくなっている。
IHS iSuppliのコンシューマ&コミュニケーション部門でシニアアナリストを務めるWayne Lam氏は、発表資料の中で、「2013年の世界スマートフォン市場では、大手機器メーカー各社が、驚異的な数のフラッグシップモデルのスマートフォンを投入している」と述べている。
同氏はさらに、「『iPhone』の成長が今後鈍化していく可能性がある上に、競合メーカー各社がスマートフォンを投入するペースを加速させている。さらに現在、携帯電話機市場の主軸はフィーチャーフォンからスマートフォンに移りつつある。携帯電話機市場は、過酷な状況にある」と付け加えた。
NECがスマートフォン事業から撤退するという報道の真偽はともかく、同社がこのような決断をしたとしても何ら不思議はない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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