Samsung同様に「big.LITTLE処理」を採用、MediaTekのタブレット向けSoC:ビジネスニュース 企業動向
MediaTekが、タブレット端末向けにARMの「big.LITTLE処理」構成を取るSoCを発表した。Samsung ElectronicsのSoC「Exynos 5 Octa」もbig.LITTLE処理を採用しているが、MediaTekは、HMP(ヘテロジニアスマルチプロセッシング)の面で大きな違いがあると主張する。
台湾の半導体ベンダーであるMediaTekは、中国のスマートフォン向けプロセッサ市場では、Qualcommとほぼ同等のシェアを持つ。その同社が、タブレット端末向けにクアッドコアSoC(System on Chip)を新たに発表し、同市場でのシェア拡大に弾みをつけた。
「“真の”HMPを実現」
MediaTekの新型クアッドコアSoC「MT8135」は、ARMのプロセッサコア「Cortex-A15」と「Cortex-A7」を2個ずつと、Imagination Technologiesの最新GPU「PowerVR Series6」を搭載する。MT8135は、Samsung Electronicsの8コアプロセッサ「Exynos 5 Octa」と同様に、ARMの「big.LITTLE処理」構成*)を採用している(関連記事:Samsungの「GALAXY S4」を分解、本丸はCortex-A7/A15の8コアプロセッサ)。モバイルプロセッサの中でbig.LITTLE処理構成を採用しているのは、今のところMT8135とExynos 5 Octaだけである。
*)big.LITTLE処理:Cortex-A15をメインプロセッサ、Cortex-A7をサブプロセッサとして用いる構成(関連記事:ARMの新コア「Cortex-A7」は「A15」と連携、単体でも性能は「A8」以上)
しかし、MediaTekによれば、大きな違いが1つあるという。「MT8135は、“真の”ヘテロジニアスマルチプロセッシング(HMP)を実現したSoC」(MediaTek)という点だ。
Exynos 5 Octaは、8コア(Cortex-A15とCortex-A7が、それぞれクアッドコア構成)をうたってはいるが、Cortex-A15とCortex-A7を切り替えて使用するので、実際に同時に駆動しているのは4コアだけになる。一方のMT8135は、デュアルコア構成のCortex-A15とCortex-A7を合わせた4コアを同時に駆動させるという。そのため、MediaTekは「“真の”HMP」と主張している。
競争の激しいタブレット向けプロセッサ市場
MediaTekは、主要顧客に対してMT8135のサンプル出荷を開始している。同社が、競争が激しいタブレット端末向けプロセッサ市場でどれくらいのシェアを獲得できるかは未知数だ。
市場調査会社のForward Conceptsは2012年に、同市場におけるMediaTekのシェアをわずか1%と報告している。
また、Gartnerによれば、「2012年における、中国のスマートフォン向けプロセッサ市場では、Qualcommが43%、MediaTekが38%のシェアを獲得した。一方、中国のタブレット向けプロセッサ市場では、Allwinner Technologyが53%のシェアを握っている」という。
タブレット端末向けプロセッサ市場のトップにはAppleが君臨している。一方で、同市場の末端を見れば、特に中国では、有名無名にかかわらず数多くのタブレット端末向けプロセッサメーカーがひしめきあっている。MediaTekは、どのあたりに落ち着くのだろうか。
「Allwinner TechnologyやRockchipなど中国のファブレス半導体企業は、MediaTekにとって脅威となるのか」という質問に対し、Moynihan氏は、競合であることは否定しなかったが、特にライバル視している様子はなかった。MediaTekはMT8135の投入によって、ハイエンドタブレット端末の市場に注力していくからだろう。
GartnerのHung氏は、「機器メーカーは、グラフィックス性能とワイヤレス通信の接続性(Wi-Fiとセルラー無線)で差異化を図ろうとしている」と指摘する。
MediaTekも、SoCでは、HMP以上にさまざまな点で他のメーカーとの差異化に取り組んでいる。PowerVR Series6の搭載もその1つだろう。Moynihan氏は、「MT8135を搭載したタブレット端末は、ハイエンドのゲームや滑らかなUI(User Interface)、グラフィックスを多用したアプリケーションなど、魅力的な機能をユーザーに提供できる」と説明している。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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