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“AI”は死語!? 検索すると、歌手がずらり……“AI”はどこへ行った?(1)(1/2 ページ)

人工知能(AI)の歴史は古い。今は、「AI」という言葉こそ聞かれなくなったが、Appleの「iPhone」に搭載されている音声認識機能「Siri」や、IBMのスーパーコンピュータ「Watson」などの登場により、人工知能自体は再び注目を集めている。では、いったい何をもってして“人工知能”というのだろうか……。

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プロローグ

 筆者がふと、人工知能(AI:Artificial Intelligence)について考えるようになったのは、長年使っていた携帯電話機(いわゆるガラケー)からスマートフォン(以下、スマホ)に変更し、音声認識を使った瞬間だった。音声認識が搭載されていることはスマホを持つ前から知っていたが、しょせんまともに使える代物じゃないだろう……とたかをくくっていた。

 ところが、実際に使ってみると、その音声認識率の高さとレスポンスの速さにまず驚いた。いくら通信方式が高速になったとはいえ、スマホ本体には音声解析部分が内蔵されていないのに、これだけの高速レスポンスで返してくる。それだけではない。こちらが発した音声から、最適な解を見出して画面上に提案をしてくれる。そして、ものすごく単純な言葉で問いかければ、スマホと会話が成り立つことも多々ある。「こりゃ、すごいなぁ」というのが第一印象であった。

 筆者は株式会社カレンコンサルティングという経営コンサルティング会社を経営している。その名の通り、日常的に経営課題の解決から、業務や組織の問題解決などをご支援させていただいている。「なんだ、エンジニアじゃないの?」「人工知能の専門家でもないの?」という声が聞こえてきそうだが、それはその通りで“元”エンジニアだ。電子計測器メーカーにて、主にハードウェア設計に従事してきた。エンジニアから経営の仕事に転身して13年以上経つが、機械の中身がどういう仕組みになっているか、ブロックダイヤグラムをイメージしたり、回路構成をおおよそ推定したりといったことはいまだにできるし、アルゴリズムも気になってしまう。今も自宅でたまにハンダごてを握るし、少し前までは、1年がかりで自作したのになかなか言うことを聞かないロボットに「こいつめ!」と思いつつ、苦戦しながらプログラミングも行っていた……そんな筆者である。

もはやAIは死語?

 さて、話を本題に戻そう。

 スマホの音声認識にびっくりさせられたことをキッカケに、そういえば最近、AIって聞かないなぁと思った。さっそく、インターネットで「AI」とキーワードを入れて検索すると、なんと、人工知能などこれっぽっちも検索結果に表示されず、歌手のAIさんがずらりと並ぶ。「ん、どういうこと?」

ちなみに、システム会社の30代のエンジニアに「AIって知ってるか?」と聞いたところ、「Action Itemでしょ!」という返事が返ってきた。「しまった、彼はPM(プロマネ)屋だった」。だんだん頭が痛くなってきた筆者だが、40代後半から50代のベテランエンジニアに同じ質問をして、ようやく「人工知能に決まってるじゃん」という答えが返ってきて安心したのである。……と同時に、今の若手や30代の中堅エンジニアはAIって言葉が通じないのかという疑問が湧いてきた。

 本コラムは、“元”エンジニアの筆者が、AI(人工知能)について思うことを好き勝手……じゃなく、我流の考えも多分に入れながら、広く浅く書くつもりだ。もちろん、これだけでは面白くも何ともないので、最新の技術の紹介や昨今流行のビッグデータへの応用、AI分野における近未来の予測など、時に独断と偏見も交えながら、可能な限り平易な言葉でお話していこうと考えている。

 一昔前、そう……筆者が大学在学中であった1980年代中ごろには、AIという言葉がよく聞かれた。“人工知能”よりも、“AI”という呼称の方がより一般的であったと記憶している。

 ちょうど、映画「ターミネーター」が日本で公開されたのが1985年だ。同映画の中では“スカイネット”と呼ばれる人工知能が登場する。「ターミネーター」に限らず、SF映画の世界では、コンピュータがうんと進化したような人工知能が登場するものが少なくない。

 筆者も、映画の影響はあったかもしれないが、大学で電子工学や情報処理の講義を受けながら、漠然と「AIってカッコいいかも……!」と思っていた。その頃は、AIの詳しいことは分からないものの、「すごい頭脳と知識を持ったコンピュータ……かな?」と考えつつ、内心では「“知能”や“意志”を持ったコンピュータなどこの数十年程度で出来っこない」と思っていたのは事実だ。一方で、「実現できたら楽しいのにな」とも思っていた。

 いずれにしても、AIにとってコンピュータは中枢の頭脳として欠かせないものの、当時のパソコン(以下PC)はまだ一部の“おたく”が使うものであった。一般家庭には普及していないし、インターネットもない。PC通信などは300ビット/秒(キロビットやメガビットではない!)の音響カプラでちまちまやっていた時代だ。ソフトウェアも、市販品を購入して使用するよりも、まずはBASICをマスターして、最低限のプログラミングができるようになることが「PCを使うことの前提条件」であった。


画像はイメージです

 なお、当時は“PC”ではなく、“マイコン(My ComputerやMicro Computerが語源)”と呼ばれる方が多かった。8ビット機では富士通の「FM-8/FM-7」が、NECからは「PC-8001/8801」が現在のハイエンドPCが購入できるくらいの価格で売られた。16ビット機としてNECから、ベストセラーとなった「PC-9801」が出始めた頃でもある。かく言う筆者も、大学の3年次に8ビットの「PC-8801 mkII」を入手した。

 この時代のPCのCPUクロックは数MHzから数十MHzである。また、搭載メモリもメインメモリで8ビット機では64kB、16ビット機では640kBが普通で、FDD(フロッピーディスクドライブ)が付いていれば、「すげぇー」と言われ、HDD(ハードディスクドライブ)などあったものなら(容量は数十MBで数十万円したが、ちょっとした衝撃ですぐに壊れた!)、「超金持ち」と言われた。

 当時はこれでも最先端であったが、ゲームなどをすると、グラフィックの描画の速度の遅さにいら立ったものだ。将棋やオセロのゲームのように、コンピュータがこちらの手を読むという、多少、人工知能的な動きをするものであっても、何回か対戦するとコンピュータの手の内が読めるようになる。PCに負けるということはまずなかった。まぁ、古き良き時代であったが、既にこの頃からPCではなくスーパーコンピュータ分野においては、着々と人工知能に関する研究は進められていたのである。

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