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ポケットにFPGA搭載の計測器を、学生実験を一新するアプローチテスト/計測

実験室にこもり、基板や箱型計測器とともにひたすら実験を繰り返す――。こんな学生実験のスタイルが大きく変わるかもしれない。デュアルコアのCortex-A9とFPGAを1チップ化した「Zynq」を搭載した、文庫本サイズの計測/制御機器が登場したのだ。ひらめきが訪れたら、学食でもカフェでもさっと取り出して実験することができるようになる。

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 百聞は一見にしかず。実践することによって、理論をより深く理解できるようになるのはどの分野でも同じだろう。工学を学ぶ学生にとってもそれは変わらない。

 ナショナルインスツルメンツ(NI)は、学生が理論だけではなく実践に基づいてシステム開発を学べるよう、“教材”となる製品を約10年前から提供している。オシロスコープやデジタルマルチメーター、ダイナミック信号アナライザといった計測器の機能と、アナログ入出力、デジタル入出力などを1台にまとめた「NI ELVIS」や「NI myDAQ」がその一例だ。特にmyDAQは、外形寸法が約14×9×3cm程度と文庫本くらいの大きさで、気軽に持ち運ぶことができる。

FPGA+デュアルコアCortex-A9を搭載

 今回、NIが学生向けの教材として新たに発表したのが「NI myRIO」である。サイズはmyDAQほどだが、最も大きな違いは、プロセッサを搭載していないmyDAQに比べ、myRIOはFPGAを搭載している点だ。具体的には、ARMのデュアルコアプロセッサと、2万8000個のロジックセルを搭載したFPGAを1チップ化したXilinxのSoC(System on Chip)「Zynq」である。その他、3軸加速度計、10個のアナログ入力、6個のアナログ出力、40本のデジタルI/O、1本のSPIなどを備えていることに加え、Wi-Fi機能を搭載しているのでタブレット端末に接続して、設計や操作を行うことも可能だ。myRIOの価格は未定で、発売は2013年10月より開始する。

 myDAQはPCに接続しないと動作しないが、myRIOはプロセッサとFPGAを搭載しているので、PCとの接続を外しても単独で動作できる。これにより、myRIOを機器やシステムに組み込んで自動制御を行うといったことも可能になる。


「NI myRIO」を使ったデモ。myRIOとダイナモメーターを接続し、モーターの回転速度を制御している。myRIOの基板の中心に見える大きめのチップが「Zynq」だ。今回のデモでは単にモーターの回転速度を制御しているだけだが、負荷を変えたり、消費電力を計測したりといったこともプログラムすることができる(クリックで拡大)
デモ用に「LabVIEW」で作成した制御プログラムである。右の図は、左の図に「myRIOのボタンを押せば、モーターが止まる機能」を追加したもの。左下の「Button」というブロックがそれに当たる。モーターのスピードを制御するシンプルなプログラムで、わずか数分でプログラミングが完了した(クリックで拡大)

 NIのAmademic Programsでディレクタを務めるDavid Wilson氏は、「信号処理や制御などの理論だけを学んでいても、“体験”してみなければ理論を理解することは難しい。持ち運びが可能な上にFPGAやWi-Fiを搭載しているmyRIOによって、学生はいつでもどこでも本格的な実験ができるようになる」と述べる。実験室や研究室にこもり、基板と大型の箱型計測器で実験を繰り返すという定番の実験スタイルが、myRIOによって変わるかもしれない。そういった意味で「myRIOは、学生の実験/設計の手法を“再定義する”製品である」と、Wilson氏は強調する。

 NIによれば、LabVIEWは、工学部を持つ多くの大学で学習や実験に採用されていて、ELVISやmyDAQの導入を検討する教育機関も増えているという。「NIは、学生が実社会に通用するシステム開発を学ぶ機会を提供していきたい」(Wilson氏)。

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