エンタープライズ用途に、民生用NANDメモリが使えるエラー訂正機能を近く製品化――LSI社:メモリ/ストレージ技術
NAND型フラッシュメモリの製造プロセスの微細化の進展に伴いエラー率が向上し、扱いが難しくなっている。その中で、LSI Corporationは、10nm台の最先端プロセス採用NANDメモリに対応する強力なエラー訂正機能を開発し、2013年中に製品化すると明らかにした。
NAND型フラッシュメモリ(以下、NANDメモリ)は、製造プロセスの微細化により、面積当たりの記憶容量は拡大し、記憶容量当たりのコストも低下している。その一方で、記憶セルに格納する電荷量が小さくなるためにNANDフラッシュが誤ってデータを記憶するエラーの割合も増加している。20nm台前半、10nm台の製造プロセスがNANDメモリに適用されるようになってからは、特にデータの書き換えによる記憶セルの劣化が顕著になり、これまで以上に書き換え回数の増加に伴ってエラー率が上昇する傾向が強まっている。
製造プロセスの微細化で、NANDメモリのエラー率が上昇
これらNANDメモリのエラーは、メモリコントローラICに搭載される「エラー訂正」(ECC)機能によって修正され、正しいデータとして出力される。ただし、ECCにも限界があり、ある一定のエラー率を超えると修正しきれなくなる。
一般に民生機器よりも、書き換え回数が多く、データエラーが許されないサーバやストレージ機器に用いられるSSDなどでは、書き換え耐性が強いNANDメモリが用いられる上、エラー率が高くても対応できる強力なECC機能を備えたメモリコントローラICが使用される。そのため、民生機器向けSSDよりも、記憶容量当たりの価格は割高となっている。
しかし、クラウドサービスなどの普及により、データセンターのサーバ、ストレージ機器は、より多くの記憶容量を低コストで記憶する必要性が高まり、微細プロセスを採用したNANDメモリを活用できるECC技術が求められている。
10nm台プロセス採用NANDメモリ向けECC技術「SHIELD」
データセンターなどエンタープライズ用途向けの、SSD用メモリコントローラを展開するLSI Corporationは、10nm台プロセスを採用したNANDメモリを想定した新たなECC技術をこのほど開発し、2013年中に出荷するフラッシュメモリコントローラICに搭載することを決めた。
新開発のECC技術は「SHIELD(シールド)」と命名。同社ストレージソリューショングループ担当エグゼクティブバイスプレジデントのPhilip G.Brace氏は、「そのエラー訂正能力は、従来技術から、画期的なレベルで強化されている」と言い切る。
Brace氏は、SHILEDの能力を示す根拠として、「HARD LDCP」「BCH 1K」といったエンタープライズ向けNANDメモリに使用される主要なECC技術との比較データを提示する。10nm台プロセス採用した先端NANDメモリで書き換えを繰り返し、各ECC技術がエンタープライズ用途で許容できるエラー率10−16をどこまで維持できるかを調査した結果だ。
それによると、書き込み/消去のサイクルが3000回程度であれば、SHILED、HARD LDCP、BCH 1Kの各技術ともに、エラー率10−16以下を維持するが、9000回に迫ると、SHILED以外はエラー率10−16を上回るエラーが発生してしまったとする。SHILEDに関しては、書き込み/消去のサイクルが1万8000回に達してもエラー率10−16以下を維持したという。単純計算になるが、SHILEDは他のECCに比べ2倍以上のエラーを訂正できる能力があることになる。「SHILEDを使用すれば、信頼性の比較的低い民生機器向けNANDメモリでエンタープライズ向けストレージを構成できるになる」とする。
SHILEDの仕組みについて、Brace氏は、「言葉が聞き取りにくい時に、正しく聞き取るには、聞き直すか、前後の文脈から言葉を推測するか、という方法がある。SHILEDは後者であり、前後のデータから、データを推測する技術を活用している」と説明した。
Brace氏によると、SHILEDは、1Znmと呼ばれる10nm台前半の製造プロセスを用いたNANDメモリにも対応できるとし、実用化が始まっている記憶セルを積層した3次元NANDについても、「3次元化してもNANDメモリのエラー発生率はあまり変わらないため、当然ながら、SHILEDで対応できる」としている。
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