安全性が高く20年保存可能、ロームの固体水素源型燃料電池システム:CEATEC 2013
ロームは、固体水素源型燃料電池システムを実現する固体水素源缶と燃料電池ユニットを展示した。このシステムは、水素発生剤を固形化することで安全性を高めた。しかも、電気を使った分だけ水素を発生させ発電するオンデマンド型の発電システムである。災害用非常電源としての実証実験もことしから始まる。
ロームは、「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1日〜5日、幕張メッセ)で、固体水素源型燃料電池システムを実現する固体水素源缶と燃料電池ユニットを展示した。このシステムは、水素発生剤を固形化することで安全性を高めた。しかも、電気を使った分だけ水素を発生させ発電するオンデマンド型の発電システムである。京都府などで2013年から災害用非常電源として実証実験が始まる。この他、「03015」サイズのチップ抵抗器をはじめとする超小型部品シリーズなども展示した。
固体水素源型燃料電池システムは、アクアフェアリー、京都大学および同社が共同で開発に取り組んでいるポータブル電源技術である。この技術は、水素発生剤粉末を樹脂で固形化し、シート状にして容器(固体水素源缶)に収めている。一体化成型された薄型の発電セルで発電が始まると、消費された水素ガス分だけ容器内の水素圧力が低下し、別の容器に入っている水を吸い込んで水素ガスを発生させる仕組みだ。固体水素源缶の圧力に変化がない(発電していない)場合は、水が供給されないため、無駄な水素が発生することはない。
今回展示したハイブリッド高出力タイプの燃料電池ユニットは、外形寸法が19×34×29cmと小型である。交流100V出力1口、5VのUSB出力2口を備え、固体水素源缶1缶で200Whを出力することができる。これは、「消費電力が50W相当のPCであれば約4時間の動作が可能である。32インチの液晶テレビだと約3時間視聴できる発電量に相当する」(説明員)。また、固体水素源缶は劣化が少なく安全性も高いため、約20年の長期保存が可能だという。
ロームによれば、2013年に20台が出荷され京都府や島根県、三重県、秋田県などの自治体で災害用非常電源として実証実験が始まる。さらに2014年には出荷台数が約200台に増える見通しである。
同社は固体水素源缶とは別に、小型カートリッジを使った携帯機器の充電向け固体水素源型燃料電池システムをこれまで開発していたが、新たにペレット状の固体水素源を開発し、会場で展示した。ペレット1個で1日分の発電が可能で、1週間分のペレットをセットにして持ち歩くことができる。
砂のように小さいチップ抵抗器「03015」
ロームは、電子部品の小型化で業界をリードしてきた。会場では「世界最小、ロームのデバイスシリーズ」と銘打ち、「RASMID」シリーズとして、チップ抵抗器やダイオードを紹介した。特に、チップ抵抗器は「0402」サイズに加えて、2013年10月より量産を始めた「03015」サイズを展示した。外形寸法が0.3×0.15mmと砂のように小さく、基板への実装面積は従来品に比べて44%削減できるという。さらに、「0201」サイズのチップ抵抗器も参考展示した。製品化については未定だが、技術的に対応が可能なことを示した。
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