競合が作れるようなものは、開発しない:リニアテクノロジー CTO ロバート ドブキン氏(2/2 ページ)
リニアテクノロジーの最高技術責任者(CTO)であるロバート ドブキン氏がこのほど来日し、EE Times Japanのインタビューに応じた。極めて技術志向の強い同社の技術部門トップであるドブキン氏に、リニアテクノロジーの技術開発方針などについて聞いた。
25年間変わらないエンジニア育成方法
EETJ リニアテクノロジーは技術力を絶対的な強みにされていますが、エンジニアの技術力を維持、強化する仕組みはどのようなものなのですか。
ドブキン氏 社内で「ジュニア」と呼ぶ経験年数1〜2年のエンジニアと、「シニア」と呼ぶ10年以上の経験者が共に働くシステムを25年以上前から行っている。「シニア」を採用することもあるが、常に「ジュニア」が経験を積み「シニア」に育っていっており、十分にこのシステムは機能していると思っている。
EETJ 25年前から現在まで、アナログ技術は大幅に複雑化し、高度化していると思われますが、その影響はありませんか。
ドブキン氏 技術が高度化しているのは事実だ。だが、既存の技術資産も使え、開発に使用するツール類も良くなっている。そういう意味ではあまり25年前と変わらない。
EETJ これからの技術開発課題、リニアテクノロジーとしての技術開発の方向性をお教えください。
ドブキン氏 まず、従来、FPGAやASICの開発に使われてきたデジタルの開発ツール類をアナログ開発に取り入れていくことが重要になってきている。また、アナログICに対する高速化要求も強い。アナログ技術だけでなく、デジタル技術を取り入れて対応することも必要だろう。もちろん、コンバータなどでは高精度化、電源ICでは高効率化という従来の要求は依然としてあり、これらへの対応も進めていかなければならない。
EETJ アナログICにもデジタル技術の要素を取り込むには、アナログエンジニアもデジタル技術を習得していかなければならないのですか。
ドブキン氏 そうではない。重要なことは“どうやって達成するか”ではなく、“何が達成できたか”だ。アナログ技術が得意な者はアナログの開発を行い、デジタル技術が得意な者がデジタルの開発を行えば良い。チームとして、達成できれば良い。
現状のエンジニアリソース規模で、売り上げ拡大を支える
EETJ 現在、リニアテクノロジーは270人を超えるエンジニアが在籍されていますが、今後、開発者リソースは拡大させていくのですか。
ドブキン氏 これ以上、エンジニアの数が増えても、人事面などでの弊害も生まれる可能性がある。より技術的な質を高めるためには、現状の規模を維持していく方が得策だろう。
EETJ 会長であるロバート H.スワンソン氏は、現状約13億米ドルの売上高を遠くない将来に20億米ドルへ引き上げる目標を掲げておられますが、現状のエンジニアリソースで売り上げ拡大は可能ですか。
ドブキン氏 リニアテクノロジーのエンジニアは、どのアナログ半導体メーカーのエンジニアよりも多く労働しているだろう。これからもハードに働いて、新製品を生み出しセールスを支えて行けば、売り上げ拡大は可能だ。
ロバート・ドブキン(Robert Dobkin)氏
リニアテクノロジーの創立者の1人であり、1981年の創立以来、30年以上にわたり高性能アナログIC設計部門を統括。現在は、エンジニアリング担当バイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)の職にある。
リニアテクノロジー創立以前は、GEリエントリ・システムズ社で計装エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、フィブリック・ネクサス社を経て、ナショナル・セミコンダクター社で約11年間、先進半導体開発部門の責任者を務めていた。
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