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百戦錬磨のエンジニアに聞く、“コスト意識をどう身に付ける?”いまどきエンジニアの育て方 ―番外編―(3/3 ページ)

開発コストを下げるには、設計や部品調達など、物理的な面で工夫するだけでは足りない。重要なのは、普段からどれだけコスト/原価を意識しているかだ。X社の開発部長であるA氏は、現場のエンジニアにコストを意識させるべく、面白い取り組みを行っている。

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 ここで紹介した取り組みは、X社全体の仕組みにはなっていない。あくまでも、Aさんが開発部門の部長という立場で行える範囲内のものだ。全社を動かすにはまだ障壁もあるし、すんなりと言うことを聞かない保守的な部門があることも事実だという。しかし、このような取り組みが大事だという仲間も徐々に増え、Aさんの取り組みは着実に実を結びつつある。

実際の開発プロセスに落とし込む

 斬新なアイデアと仕掛けで、周りを引っ張ってきたAさんだが、これらを“その場限り”の取り組みで終わらせてはいない。実際の開発プロセスに落とし込もうとしているのだ。まずは、フィージビリティスタディ(実現可能かどうかを探る)の意味も兼ねて「やってみる」が、Aさんの流儀だ。

 これまでいくつか取り組んできたものは、開発プロセスに組み込みつつある。企画から開発、製造に至るプロセスの要所要所に“関所”を設け、目標原価が達成できているかどうかを常時、確認している。そのため、製造部門のメンバーも企画段階から関与している。


 今回登場したX社は、その名を聞けば誰もが知っている大手メーカーだ。組織体質は、最初に書いたように非常に真面目。皆、言われたことは着実にこなす優等生がそろっているが、言われた以上のことはやらない。総じて覇気もなく、思いっきりとがって何かを“やらかす”ような異端児は限りなくゼロに近い。数万人も社員がいるが、おそらく、異端児は10人もいないだろう。ここで言う“異端児”とは、「もっと会社を良くしていこう!」「もっと世の中に貢献しよう!」「楽しい開発現場にしよう!」といった前向きなエネルギーと内発的動機が桁外れに強く、降りかかる火の粉をものともしないタイプを指す。

 Aさんは、まさしくこの“異端児タイプ”だ。周りにとって彼はスーパーマンのように見えるかもしれないが、本人はいたって冷静に「普通のことを普通にやっているだけ」とサラリと言ってのける。

 今回紹介した内容は全て、やろうと思えばできることだ。まずは「やってみる」ことを、読者の皆さん、特に課長以上の管理職のポストに就いている皆さんに強く願ってやまない。

 では、Aさんの言葉を借りて締めくくりとしよう。

日本のモノづくりに必要なこと

頭ごなしに「コスト! コスト!」と言っても、コストの削減は実現できず、設計力も落ちる。こんな馬鹿げたことはない。

コスト意識は、製品の開発/設計を通じて醸成される。“モノづくりの流れ”を全員でしっかりと理解し、リーダーであれば「人の動かし方を知る」ことも重要だ。

そのためには、まずは一歩を踏み出すこと。自分も最初からできたわけではない。しかし、やらないといけないという思いが自分を突き進めてきた。今、取り組んでいることも“継続”していかなければならない。

我々に続く次の世代のエンジニアが、サラリーマン技術者ではなく、エンジニアとしてもマネジャーとしてもプロフェッショナルであること。部門の枠を越えていろいろな人の智を結集して新しいものを生み出すこと。

今の日本に必要なモノづくりの土台は、まさにこれだと信じています。

 最後に、長時間にわたりご協力をしていただいたX社Aさんに、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

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