ビッグデータ解析が、コグニティブコンピューティング発展の鍵に:ビジネスニュース
IBM Researchにおいて、コグニティブコンピューティングのシンポジウムが開催された。ある投資家によれば、ビッグデータや医療分野がコグニティブコンピューティングの発展を支えるという。
IBM Researchのアルマデン研究所(Almaden Research Center)において、コグニティブコンピューティング(認識するコンピューティング)関連のシンポジウムが開催された。会場においてさまざまなプレゼンテーションが行われ、将来的にはビッグデータ解析によって人間の脳を模倣することが可能になり、やがては脳を置き換えられる機能が実現する可能性もあることが明らかになった。
ベテランの投資家であるVinod Khosla氏は、スマートシステムにおける医療上の判断機能を強化することにより、ヒューマンエラーを低減することが可能な革新的技術の重要性について語った。また、コグニティブコンピューティング分野の研究者であるJeff Hawkins氏は、「大脳新皮質が備える能力を応用して大量のデータセットを分類する機能の開発は、順調に進んでいる」とアピールした。
Khosla氏は、「現在の医療分野では、専門家である医師の判断に大きく依存している。医師が間違えることはまずないだろう、きっと正しいはずだ、という先入観をベースとしている。しかし、医師の見解だけによる判断は避けるべきではないだろうか」と述べる。同氏は、起業家としてさまざまな事業を手掛けている他、Sun Microsystems(オラクルに吸収合併されている)の共同創設者でもある。
Khosla氏は、ヘルスケア分野での診断や治療におけるヒューマンエラーの影響を定量化した、さまざまな研究成果を取り上げた。また、同氏は現在、ヘルスケアセンサーとその分析調査などを手掛ける新興企業AliveCorやGinger.io、Kyron、Quanttusなどに対して投資を行っており、こうした分野における研究開発の重要性について語った。
Khosla氏は今回のシンポジウムにおいて、「データサイエンスは今後10年の間に、医療分野において、生物科学を上回る貢献をもたらすだろう」と述べた。「今後、ユーザー主導型のヘルスケア分野を皮切りに、大きな変化が起こっていくだろう。成功事例がいくつか出始めれば、大きな注目が集まると期待している」(同氏)
データセットを追跡するアルゴリズム
一方Hawkins氏は、同氏が開発した最新製品「Grok」を発表した。Grokは、大脳新皮質が持つ能力を応用することによって、SDR(Sparse Distributed Representations)を作り、大量のデータセットを追跡できるという。
Grokは、Hawkins氏の会社がオープンソースコードとして公開しているSDRアルゴリズムを搭載する。
このソフトウェアは、Amazonのクラウドサービス向けに提供されている。データストリーム内の異常を迅速に検知してランク付けし、素早く調査することが可能だ。Hawkins氏はこのツールについて、「マウスの大脳新皮質の1/1000に相当するサイズの、未発達な脳のようなセンサーだと考えてもらえれば」と説明する。「何らかの異常が生じれば、それを感知することはできる。しかし、異常が発生した根本的な原因については理解することができない。特定のシステムにおける物理モデルと、その仕組みを解明できるようにする機能が必要だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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