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「分割で電子計測へのR&D投資は増える」――なぜ、アジレントは会社分割するのかビジネスニュース 企業動向(1/2 ページ)

2014年11月に、電子計測事業とライフサイエンス/化学分析事業とで会社分割することを決定したアジレント・テクノロジー。両事業共に2桁を超える営業利益率を確保しながら、なぜ、このタイミングで会社分割を行うのか。アジレント日本法人社長の梅島正明氏に会社分割の経営判断に至った理由、狙いなどを聞いた。

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 アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies/以下、アジレント)は2013年9月に、電子計測事業会社とライフサイエンス/化学分析事業会社の2社に会社分割すると発表した(関連記事)。

 “会社分割”“分社化”といった再編策は、赤字事業を切り離すなど企業再建策として用いられる場合が多い。しかし、アジレントは、2008〜2009年のリーマンショックに伴う世界的な景気低迷を乗り越え、順調な成長軌道に乗って事業を拡大させている。このほど発表した2013年度(2013年10月期)業績でも、売上高68億米ドル、営業利益9.5億米ドルと営業利益率は2桁を超え、計測業界にあって優良企業といえる実績を残している。

 そんな中で、突然、発表された会社分割。なぜ、好調な事業展開が続く中で、今回の経営判断に至ったのか――。さらに、分割後のアジレントはどうなるのか――。アジレント日本法人社長の梅島正明氏に聞いた。


「分社」ではなく「分割」

EE Times Japan(以下、EETJ) 発表された会社分割の内容をお教えください。


アジレント日本法人社長の梅島正明氏

梅島氏 2014年11月初旬をメドに、電子計測機器事業と、当社内でLDA事業と呼んでいるライフサイエンス/化学分析機器事業とで、会社を2つに分割する。

 1つ断っておきたいが、「分社」ではなく、「会社分割」と表現している。分割した後の2つの会社は、互いに独立した会社として、上場する予定。両社は、親会社と子会社の関係でもなく、持ち株会社の傘下に並ぶ訳でもなく、一切、資本関係を持たず、別個の会社として、事業を行っていく。

 アジレント・テクノロジーという社名は、LDA事業会社が継承することが決定している。従って、電子計測機器専業となる会社は、新社名を名乗ることになる。

左=現時点でのアジレントの会社概要 右=会社分割後の2社の事業イメージ (業績数値などは、2014年8月14日時点のもの) (クリックで拡大) 出典:アジレント・テクノロジー

EETJ 新社名はいつ頃決定されますか。

梅島氏 会社分割決定直後から、新社名の選考を進めている。専門家などの意見を聞きながら、慎重に検討を進めている。選考当初は、約6000個あった新社名候補も現状、約30個程度まで絞られてきたと聞いており、作業は予定通り進んでいる。2013年9月の会社分割発表時に、『数カ月以内に新社名を公表する』とした通り、そう遠くない時期に、新社名を公表できると考えている。

EETJ そもそも、会社分割に至った理由をお聞かせください。

梅島氏 端的に言えば、電子計測事業、LDA事業ともに、それぞれ独り立ちできる事業規模になったため、独立するということだ。

 会社分割など企業の組織再編は、業績が低迷する企業の経営策として実施されるためか、マイナスのイメージを持たれることが多い。しかし、今回の会社分割に関しては、電子計測事業、LDA事業双方ともに2桁の営業利益率を確保し、黒字だ。売り上げ規模も、電子計測事業が約29億米ドル、LDA事業が約39億米ドルと決して小さくなく、市場でも確固たる地位を確立できている。

両事業で最適な投資が行えるようになる

EETJ では、なぜ、会社分割をわざわざ行うのでしょうか?

梅島氏 アジレントは、1999年にヒューレット・パッカード(以下、HP)の電子計測機器事業部門などコンピュータ、プリンタ以外の事業部門が、会社分割の形で誕生した会社だ。当時、最も売り上げ規模が大きい事業は電子計測事業であり、現在のLDA事業の売り上げ規模はゼロに等しい程度に過ぎなかった。その後、いくつかの事業部門を分離*)しながら、LDA事業を成長事業と位置付け投資を行った結果、電子計測事業を上回るまでの事業規模に成長した。

*)2005年に電子部品事業をアバゴ・テクノロジーとして分離。2006年には半導体テスター部門をベリジー(その後アドバンテストが買収)として分離するなどしている。

 このLDA事業の成長は、電子計測事業が稼いだ利益をLDA事業への投資に充ててきたからこそ、実現できた。ただ、このことは、電子計測事業から見れば、自ら稼いだ利益にも関わらず、自らの事業に投資できていなかったことを意味する。分割後の電子計測専業新会社は、自らの利益を自らの事業に投資できるようになる。

 LDA事業は、電子計測事業の売り上げ規模を上回り、電子計測事業の利益に頼らず成長できるところまできた。要は、LDA事業が電子計測事業の下から巣立ち、卒業していくようなものだ。

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