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「分割で電子計測へのR&D投資は増える」――なぜ、アジレントは会社分割するのかビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)

2014年11月に、電子計測事業とライフサイエンス/化学分析事業とで会社分割することを決定したアジレント・テクノロジー。両事業共に2桁を超える営業利益率を確保しながら、なぜ、このタイミングで会社分割を行うのか。アジレント日本法人社長の梅島正明氏に会社分割の経営判断に至った理由、狙いなどを聞いた。

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どれぐらい電子計測への投資は増えるのか?

EETJ 分割後の電子計測専業会社の投資は、現状の電子計測事業関連投資よりもどの程度増えるのですか。

梅島氏 現在、全投資額のうち、どの割合で電子計測事業関連に投入しているかは、社内でも公表されておらず、明らかにできない。ただ、近年、ダコ社買収(2012年、買収額22億米ドル)、バリアン社買収(2010年、買収額約15億米ドル)などLDA事業の強化に向けた複数のM&Aを実施してきた。ここ3年程度だけで、LDA事業のM&A投資額は合計でおおよそ4000億円に達する。これは、会社規模から考えて相当に大きい投資だ。このことからも、会社分割で電子計測に対する投資規模が増えることが理解してもらえると思う。

EETJ LDA事業側から見た分割の利点はどのようなものですか。

梅島氏 LDA事業としても、事業方針に沿った最適な投資が行えるようになる。LDA事業は、ライフサイエンス向けなど、右肩上がりの成長を続けている事業だ。一方で、電子計測事業は、シリコンサイクル/経済動向など受給変化の影響を受けて、良いとき、悪いときを繰り返す大きな波を伴って成長していく事業だ。そのため、最適な投資を行うタイミングも全く異なる。それぞれ専業会社として、最適な投資が行えることは大きな利点だ。専業であることは、投資家など周囲にも理解されやすく、それぞれがより魅力的な企業として認知されやすくもなる。

欠点よりも利点が大きい

EETJ 分割には、利点がある一方で、欠点もあると思います。例えば、電子計測事業が受給サイクルの低迷期に、安定した利益を得ているLDA事業に支援してもらうといったことが不可能になりますね。

梅島氏 その通りで、欠点もある。互いの事業で支え合うという構造は、これまで両事業を1社で行う利点として強調してきたことも事実。ただ、電子計測事業は、2000年のITバブル崩壊、リーマンショックと2度の大きな需要低迷期を経験し、その反省を生かし、需要低迷時でも利益を確保できる体質に変わっている。営業利益率の実績などからも理解してもらえるかと思う。そういう意味では、電子計測事業としても、独り立ちできる準備が整ったので、会社分割を実施できるようになったということ。こうした状況から、会社分割に伴う欠点よりも、利点の方がはるかに多くなっていると判断し、分割決定に至っている。

会社分割「良い意味で慣れている」

EETJ ただ、間接部門などは1つを2つに分ける必要がある他、ITシステムの分離なども伴います。

梅島氏 会社分割に関して、当社は、何度も経験があり、良い意味で慣れている。私も含め、HP時代から在籍している者にとっては「またか」と思うぐらい。それだけ、当社には会社分割に関するノウハウがある。間接部門などは、一方の会社がもう一方にアウトソースする形で、徐々に移管するなどの対応も可能だ。システム面などの分割での懸念はほぼない。

 分割に伴う課題を挙げるのであれば、電子計測事業にとっての社名変更ぐらいだ。社名が変わるため、一時的とはいえ、ブランド力は低下する。これをどう補うかだろう。ただし、顧客との接点を持つ、人の部分や販売チャネルは一切変わらないので、すぐに新社名を認知してもらえるようになるはず。電子計測事業の顧客から見れば、今回の会社分割は、単なる社名変更のように思えるだろう。社内的にも、一般的な社名変更と大差がないかもしれない。

日本でも、2014年11月をメドに新体制へ移行

EETJ 日本法人としての会社分割の流れは、どのようなものですか。

梅島氏 全社のスキーム、方針に沿って、手続きを進める。従って、2014年11月には新会社発足と同時に、新会社の日本法人が事業をスタートさせる予定だ。オフィスも、無理に引っ越すようなことはない。アウトソースなども行う予定であり、セキュリティなどを確保するため、分ける部分はしっかりと分けるが、一定の近い距離を少なくともしばらくは保つだろう。

EETJ 分割後の日本法人の人事などは決まっていますか。

梅島氏 まだ決まっていない。ただし、大原則として、現在の人員配置を維持することは決まっている。そのため、おそらく、電子計測事業出身で、電子計測事業を担当する私自身は、電子計測専業会社に所属することになるだろう。

EETJ 分割まで、あと1年ですね。

梅島氏 法的な手続きなどを考えれば、あと1年しかないという感じだが、事業としては、これまで変わりなく、会社分割作業のために何かが滞るようなことがないよう実施していく。電子計測事業への投資は、分割により増える。その点は、特に楽しみな部分だ。

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