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「大手電源ICメーカーがやれることはやらない」――電源でFPGAの価値を高めるアルテラビジネスニュース 企業動向(1/2 ページ)

アルテラは、電源ICメーカーを買収して自社製FPGAに最適な電源デバイスを自ら提供する新たな挑戦を行っている。2013年5月の買収から半年が経過した現在の電源ICビジネスの状況などを、電源ビジネスにおけるマーケティング担当者に聞いた。

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 アルテラは2013年5月に、ファブレス電源ICメーカーのエンピリオンを買収(関連記事:アルテラが電源IC事業に参入、自社FPGAに最適な電源ICを開発/販売へ)し、自社製FPGAに最適な電源ICの提供をスタートしている。FPGAメーカーが自ら自社デバイスに応じた電源を提供するケースは、業界でも初の試みとみられ、FPGA業界、パワーデバイス業界双方から注目を集めている。

 買収から半年が経過し、アルテラ傘下としてのエンピリオンの電源ICビジネスはどう変わったのか。買収の狙いや今後の電源ICビジネスの方向性も含めて、アルテラのFPGAパワーソリューション関連マーケティング業務を統括するパワービジネスユニット担当マーケティングディレクターであるマーク・デイビッドソン氏に聞いた。


高度化するFPGAへの電源供給


マーク・デイビッドソン氏

EE Times Japan(以下、EETJ) あらためてアルテラがエンピリオンを買収した狙い、背景をお教えください。

デイビッドソン氏 FPGAは、製造プロセスの微細化なども手伝い、とても複雑化している。それは同時に、FPGAに電源を共有するパワーサプライ部分の設計が複雑化していることも指す。パワーシーケンシー(FPGAの回路に電源を供給する順序)や、精度、効率、システムとしての消費電力低減などあらゆる面で、複雑、高度になっている。

 このことは、パワーサプライを設計する顧客が直面している課題であり、FPGAベンダーであるアルテラが、電源IC、強いてはパワーサプライアーキテクチャを提供することで課題解決の手伝いを行いたいというのが買収の狙いだ。

EETJ 電源ICのサプライヤーは、その多くがアナログICを専業、または主力事業の1つとして展開し、規模の大きなメーカーも多くあります。その中で、それら電源ICメーカーを競合他社として、事業を行っていくことに勝算はあるのですか。

デイビッドソン氏 私自身も、電源ICの大手であるナショナル・セミコンダクター、テキサス・インスツルメンツに在籍した経験があり、それらの大手電源ICメーカーの強さを理解している。そして、そういった大企業と、電源IC市場でビジネス競争して、勝つことはとても難しいことであり無謀だ。

 われわれは、大手電源ICメーカーがやれることはやらない。われわれのパワービジネスは3つの独自の方向性を持って、アルテラFPGAのユーザーが求めることに、応えていく。

EETJ 3つの独自の方向性とは、どのようなものでしょうか。

ディビッドソン氏 1つは、エンピリオンの持つ独自のケーパビリティ(可能性)をさらに強固なものにしていくこと。2つ目は、FPGAに非常にフォーカスするということ。そして3つ目は、FPGAの消費電力を下げるなどFPGAアーキテクチャと連携、貢献していくというものだ。

高速スイッチングを低損失で実現

EETJ まず、エンピリオンの独自のケーパビリティとは、どのようなものですか。


小型/高効率が特長のエンピリオンの電源IC。最も右が15A対応品

デイビッドソン氏 パワーICは、プロセス技術に依存する部分が多い。その中で、エンピリオンは、高速スイッチングを低損失で行えるプロセス技術を持つ。技術的には、トレンチFETとラテラルFETの利点を組み合わせたような独自プロセス技術だ。高速スイッチングが行えることは、インダクタ、コンデンサといった電源IC周辺の電子部品を小型化できるという利点がある。そしてエンピリオンは、FET制御技術、パッケージへのインダクタ内蔵技術があり、電源回路を小型化できるという利点がある。

EETJ FPGA向けへの注力を掲げられていますが、CPUやDSP、ASICなどFPGA以外のデバイス向け電源ICは手掛けないのですか。

デイビッドソン氏 アルテラFPGAに非常にフォーカスするが、FPGAだけ、アルテラFPGAだけのための電源ICを展開するという意味ではない。まずは、アルテラFPGAの開発キット、リファレンスボードへの搭載を行っていき、アルテラFPGAとともに使用されるようにする。そして、アルテラFPGAが乗る基板の上で、アルテラFPGA以外のCPUなどのデバイスにも電源を供給できるような提案を行っていく方針だ。

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