的確な判断? マイクロソフトによるノキアの携帯事業買収:ビジネスニュース 企業動向
マイクロソフトによるノキアの携帯事業の買収が、米連邦取引委員会(FTC)および欧州連合(EU)によって承認された。アナリストは、「マイクロソフトにとって、この買収は適切な選択だったのではないか」とみている。
マイクロソフトによるノキアの携帯事業部門の買収計画が、米連邦取引委員会(FTC)および欧州連合(EU)によって承認された。アナリストの中には、今回の買収による影響についてはまだ分からないものの、今後はモバイルアプリの開発や端末の性能向上が加速することになるとみる者もいる。
ノキアは2013年9月、同社の携帯事業部門を約54億ユーロ(約7130億円)でマイクロソフトに売却することに合意した(関連記事:マイクロソフトがノキアを買収、3万2000人が移籍へ)。手続きは、2014年第1四半期中に完了する見込みだ。これによりマイクロソフトは、ノキアが保有するライセンスを10年間使用できるようになる。
ノキアの前CEO(最高経営責任者)であり、現在はマイクロソフトのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるStephen Elop氏は、「両社の間で協業関係を構築することにより、マイクロソフトのソフトウェアエンジニアリング技術と、ノキアの製品エンジニアリング技術や数々の受賞を獲得した設計技術、世界的な販売網、マーケティング、生産能力などを組み合わせていく。これによって、両社の力を最大限発揮できるようになる」と述べている。
ノキアのプレスリリースによると、マイクロソフトは今回の買収で、ノキアの携帯電話機/スマートデバイス事業部門や設計チーム、生産設備、機器/サービス関連の販売/マーケティング部門、関連するサポート部門などを取得するという。また、ノキアの従業員約3万2000人が、マイクロソフトに移る予定だ。
米国の市場調査会社であるForward Conceptsでプレジデントを務めるWill Strauss氏は、「今回の買収は、両社にさまざまな影響をもたらすことになる。今回の買収が正しい選択だったかどうかはまだ分からないが、マイクロソフトとノキアは、それぞれ培ってきた実績から生み出されるメリットを共有し合うことができるだろう」と述べる。
またStrauss氏は、「マイクロソフトにとっては、今回の買収は適切な選択だったのではないだろうか。マイクロソフトはこれまで、ハードウェア分野への参入に失敗してきたが、今後はユーザー基盤を拡大できるようになるだろう」と述べている。
Strauss氏は、両社による共同開発の成功事例として、ノキアのWindowsスマートフォン/タブレット端末「Lumia」シリーズや、マイクロソフトのタブレット端末「Surface」を取り上げた。一方で、ノキアにとってSymbian OSが重荷になっていることを指摘している。同氏は、「ノキアには当時、明らかに欠けているものがあった。このため同社にとって、マイクロソフトは救世主だったといえる。ノキアには、Symbian OSの大幅に改良するか、または新しいOSを探すという選択肢しかなかった。ノキアはこれまで、ハードウェア中心主義を貫いてきた。ハードウェアだけに固執し、ソフトウェアを軽視してしまったために、それが致命傷となった。自社のソフトウェアに依存する状態が長く続いたことから、洗練を追求することで差異化に成功したiOS搭載端末へと多くのユーザーが流れていった」と分析している。
マイクロソフトのノキアの携帯事業買収によって、特にモバイル機器向けアプリをはじめとする新製品の開発に弾みがつくとみられる。携帯電話機メーカーを入手できたことは、マイクロソフトにとって最良の決断だったといえる。
さらにマイクロソフトは、ノキアのマッピング/位置情報サービスプラットフォーム「HERE」の戦略的なライセンシー(ライセンス利用者)となり、4年間のライセンス料を別途支払う予定だ。ノキアのプレスリリースによれば、HEREは今後も、モバイルやエンタープライズ、車載といった分野をターゲットにしていくという。
マイクロソフトのCEOであるSteve Ballmer氏は、「今回の買収は、未来に向けた大胆な決断だったといえる。マイクロソフトは、ハードウェア設計/エンジニアリングや、サプライチェーン、生産管理能力の他、販売実績やマーケティング、販売網など、ノキアが培ってきた実績を共有することにより、軽やかな足取りで前進できるようになるだろう」と語る。
一方でStrauss氏は、「マイクロソフトは、ノキアのエンジニア/設計者たちの創造力や企業家精神を潰すことのないよう、細心の注意を払う必要がある。マイクロソフトが慎重な対応を取らなければ、ノキアの能力を台無しにする可能性もある。過去には、買収した側の企業文化が、買収された側の従業員や社風とかみ合わなかったという失敗例もある」と指摘した。
ノキアは買収手続きの完了後、センサーや材料技術、クラウド/Webといった分野で技術開発を進めていく予定だ。さらに、技術ライセンスプログラムの拡充も計画しているという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AppleとSamsungの特許係争、本当の勝者はMicrosoft?
中国メディアは、欧米メディアほどAppleの勝訴を大々的には取り上げてはいない。だが、中国のスマートフォンメーカーにも大きな影響を与えることは確実である。さらに、訴訟に巻き込まれる危険性のあるAndroid端末に代わり、Windowsスマートフォンが台頭してくるとの見解を示す専門家もいるようだ。 - AppleにMicrosoft、Samsungも開発中? スマートウォッチ市場が拡大
ここ最近、注目が集まっているスマートウォッチ。2013年には、120万台が出荷される見込みだ。AppleやMicrosoft、Samsung Electronicsも独自のスマートウォッチを開発しているとうわさされており、今後、同市場は順調に成長するとみられる。 - 今回は国内販売を急いだマイクロソフト、新Surfaceは米国3日遅れで日本に登場
日本マイクロソフトは、第2世代のタブレット端末「Surface 2」「Surface Pro 2」の国内販売を2013年10月25日に開始する。前世代品である「Surface RT」は2013年3月に、「Surface Pro」は同年6月に日本での販売を開始したばかりだ。Surface Proに至っては、わずか4カ月後に後継機種が投入されることになった。