AMDのプロセッサ「Kaveri」、ベンチマーク性能でインテルのCore-i5を上回る:プロセッサ/マイコン
AMDが新型のプロセッサ「Kaveri」を発表した。ベンチマークテストでは、インテルのプロセッサ「Core i5-4670K」を上回る性能を達成したという。
AMDは2014年1月14日、PC向けに最新APU(Accelerated Processing Unit)「A10シリーズ(開発コード名:Kaveri)」を発表した。x86コアとグラフィックスコアを搭載し、最大のライバルであるIntelのミドルレンジ品を超える性能を実現するという。アナリストからは、このKaveriを称賛する声が上がっている。しかし、現在のところデスクトップ向けのバージョンのみの提供であるほか、Intelのハイエンド品には性能面で劣るといった指摘もある。
Kaveriは、最大4個のSteamrollerコアと、最大8個のGCN(Graphics Core Next)ベースのグラフィックスコアを搭載する。Intelの「Haswell(Core i5-4670K)」との間でベンチマークスコアを比較したところ、Kaveriの方が3DMarkで87%、Basemark CLで61%高かったという。
AMDは今回、同社の新グラフィックスAPI「Mantle」をサポートすることにより、MicrosoftのWindows向けマルチメディアAPI「DirectX」を超える性能を実現したという。現在、Mantleをサポートしているコンピュータゲームは、少なくとも1つ存在しているようだ。
米国の半導体市場調査会社であるInsight64で主席アナリストを務めるNathan Brookwood氏は、「AMDは、Kaveriの競合対象を、Intelのローエンド品『Core i3』ではなく『Core i5』としたことにより、Intelに対する競争力を高められた」と述べる。
しかし、IntelのHaswellは、ノートPCとデスクトップPCのいずれにも搭載可能だ。AMDは、次に機器メーカーが更新する時期に合わせて、2014年後半にはノートPC向けバージョンを投入する予定だとしている。しかし今のところ、Kaveriはデスクトップ向けのみに限られている。それでも、Haswellが3次元ゲート(Tri-Gate)構造のトランジスタ技術を用いた22nmプロセスを採用している一方で、Kaveriは、その1世代前の技術となる28nm世代の高誘電率膜/金属ゲート(HKMG:High-k/Metal Gate)を適用していることを考慮すると、Kaveriは非常に優れたグラフィックスベンチマークを達成したといえる」(Brookwood氏)。
「グラフィックス対応は不可欠」という強いメッセージ
米国の市場調査会社であるJon Peddie Research(JPR)でプリンシパルを務めるJon Peddie氏は、「A10は、これまでのAMD製品の中で最も高い性能を実現したハイブリッドSoCだ」と述べる。AMDは、Kaveriの性能全体の40%をグラフィックスに割り当てている。このことからも、同社が、「システム要件に対応する上で、グラフィックスは不可欠だ。グラフィックスへの対応なしには何も始まらない」という明確なメッセージを発していることが分かる。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏は、「Kaveriは、マルチコアGPUと、TensilicaのオーディオDPS『TrueAudio』、ビデオコーディングエンジンを組み合わせることにより、Haswellを超える優れたマルチメディアプラットフォームを提供することができる。ただし、Intelの『Iris Pro graphics』やCore i7に対しては劣るようだ。Kaveriは28nmプロセス技術を採用していることから、AMDは今後、価格面での競争を展開していくことになるだろう」と述べている。
Kaveriの演算性能は、最大856GFLOPS(ギガフロップス)。4MバイトのL2キャッシュを備え、動作周波数は3.3GHz以上だ。HSA(Heterogeneous System Architecture)」に対応するため、GPUとCPUが外部メモリを共有することができる。
またKaveriは、AMD独自の指向オーディオ技術やノイズ低減技術などを採用している。さらに、PCI Express Gen3をサポートし、4K解像度のスクリーンにも対応可能だ。熱設計電力(TDP:Thermal Design Power)は、45〜95Wである。
AMDは、Kaveriのタブレット端末向けバージョンの出荷時期については明らかにしていない。タブレット市場は現在、クライアントコンピューティングの分野において、最も急速に成長している市場だ。今から10年前当時、クライアントコンピューティング市場の中核を担うと期待されていたのは、ノートPCだった。しかしAMDは、x86プロセッサだけでシステムを駆動することは不可能だとの判断に基づき、グラフィックスコア開発を手掛けるATI Technologiesを2006年に買収している。
現在AMDにとって、打ち負かすべきクライアントプロセッサメーカーは、IntelではなくQualcommだ。QualcommのGPUコア「Adreno」は、高いベンチマークスコアを達成していて、スマートフォン/タブレット市場では、Imagination Technologiesに続く第2位のシェアを獲得している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AMD、モバイル向けに新型プロセッサを発表
モバイル機器向けの製品開発に力を入れているAMDが、2014年に出荷を開始する予定のプロセッサ2品種を発表した。CPUコア「Puma」を搭載し、Windows 8.1の新機能「InstantGo」をサポートする。 - Haswellの“穴”を狙ったAMD、ゲーム向けの5GHzプロセッサを発表
AMDが、コンピュータゲーム向けに8コアのプロセッサ「FX-9590」を発表した。動作周波数は最大で5GHzに達する。Intelが発表したばかりの新プロセッサ「Haswell」には、そこまで高い周波数を実現したプロセッサは、まだない。 - AMD、サーバの大型案件を獲得
Verizonはデータセンター7拠点に、AMDのエンタープライズ向けパブリッククラウド用サーバを導入することを決定した。サーバ市場でのシェア拡大を狙うAMDにとって、大きな一歩となった。