ヘッドアップディスプレイ上でARを実現、韓国の研究所が新プロセッサを開発:プロセッサ/マイコン
韓国の研究所が、ヘッドアップディスプレイ上でAR(拡張現実)を実現するプロセッサを開発した。720pの高解像度ヘッドアップディスプレイをサポート可能だ。
韓国のKorea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)が、ヘッドアップディスプレイ(HUD)上でAR(拡張現実)を実現可能なカスタムプロセッサを開発した。Googleの「Google Glass」を超えるウェアラブル機器を実現できる可能性があるという。
ARとは、オンラインデータと物理的な対象物との融合を指す。従来は、QRコードとマーカーを使って実現する手法が多く採用されてきた。
KAISTによれば、このような手法より、コンピュータに自動的に物体を認識させる手法の方が優れているが、既存のウェアラブルディスプレイ上で実現するのは難しいという。KAISTの論文によれば、「例えば、Google GlassのVGA入力にマーカーレスARを実装したとする。プロセッサにTexas Instruments(TI)の『OMAP 4430』を採用したとすると、消費電力は、0.2フレーム/秒のスループットで1.3Wほどになる。これでは、とてもウェアラブル機器としては使えない」という。
そこで、KAISTの研究グループは、AR対応プロセッサを独自に開発した。開発したチップは、65nmプロセス技術を適用し、832万ゲートを持つ。250MHzの動作周波数におけるピーク性能は1.22TOPS(Tera Operations Per Second)、1.2Vの電源電圧で消費電力量778mWを実現するという。また、1.57TOPS/Wの電力効率を達成したとしている。
このチップは、少なくとも9種類のコアを計36個搭載していて、これらのコアを2次元メッシュで接続しているという。720pの高解像度ヘッドアップディスプレイをサポート可能だ。
KAISTは、チップやシステムの商用化を予定していないため、“韓国版Google Glass”がすぐに実用化される見込みはない。だが今回の研究成果は、次世代ユーザーインタフェースを搭載するスマートグラスの開発を目指すメーカー各社に向けて、1つの方向性を示したといえるだろう。Samsung ElectronicsやLG Electronicsが同様のチップを自社のウェアラブル機器に採用する可能性もある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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