NIMS、「世界最小」の高性能コンデンサ素子を作成:材料技術
物質・材料研究機構(NIMS)は、導電性と誘電性の2種類の酸化物ナノシートにより、「世界最小」とする高性能コンデンサ素子の作成に成功したと発表した。従来のセラミックコンデンサよりも大幅な小型化、高性能化が実現できるという。
物質・材料研究機構(NIMS)は2013年2月、導電性と誘電性の2種類の酸化物ナノシートを積み木細工のようにサンドイッチ構造に堆積させ、「世界最小の高性能コンデンサ素子の作成に成功した」と発表した。
モバイル機器などに用いる小型のコンデンサは、セラミックスナノ粒子からなる誘電体層と電極をサンドイッチ状に交互に多層積層した積層セラミックコンデンサ(MLCC)が一般的だが、革新的な小型化を図るには材料、プロセスの両面でほぼ限界に達しつつあり、新たな材料、プロセスの登場が望まれている。
NIMSでは、従来のMLCCの小型化手法として用いられた最先端の微粒子加工技術や薄膜技術によって素子の薄膜化・集積化を実現する“トップダウン手法”とは逆に、独自に開発してきた分子レベルの薄さの2次元ナノ結晶「無機ナノシート」を用いた“ボトムアップ手法”の素子製造プロセスを開発。「世界最小の高性能コンデンサ素子の作製に成功した」とする。
ナノシートは、厚さが原子数個で構成され、1nm前後と極薄であるのに対して、横方向にはその厚さの1000倍以上、大きな場合では10万倍にも及ぶ広がりをもった2次元ナノ物質であり、「グラフェンと共通した特徴を有するユニークな物質」という。
NIMSは、このナノシート技術をベースとして新規デバイスを創製することを念頭に開発を実施。これまでにNIMSが開発してきたナノシートの中から、誘電体層および電極層向けにそれぞれぺロブスカイト型酸化ニオブナノシート(組成:Ca2Nb3O10-)と酸化ルテニウムナノシート(Ru0.95O20.2-)を使って、溶液プロセスを用いてガラス基板上に「ナノ誘電素子」を構築。誘電体層と電極層のナノサイズの薄膜化を実現した。
石英ガラス基板上に製作した誘電ナノデバイス。aは外観、bはデバイス表面に上部電極として設置したドットパターン。cは、酸化ルテニウムナノシート膜の拡大。dは断面、eは組成分析データとなっている (クリックで拡大) 出典:物質・材料研究機構
さらに室温・溶液プロセスで積み木細工のように積層することで高品位の電極/誘電体/電極(MIM)のサンドイッチ型素子を作製した。
最新のMLCCの厚みが500nm程度であるのに対し、この素子の厚みは30nm弱を実現したという。「世界最小」(NIMS)という薄さながら、103〜106Hzの広い周波数範囲で安定かつ非常に高い静電容量(27.5μFcm-2)を示したとする。
今回試作した素子は、MLCCのMIM構造1ユニットに相当し、多層化が今後の課題となるが、「性能は市販されている現行のMLCCの約2000倍に相当することに加え、全て簡便、安価、低環境負荷の室温・溶液プロセスで製造できるため今後の多層化工程にも有利であり、将来の応用展開に向けて極めて有望な成果であるといえる」(NIMS)とする。
今回の開発成果についてNIMSは、「ナノシートをベースに画期的な性能を発揮する誘電ナノデバイスの開発に成功したものであり、現行のMLCCの限界を打ち破り、大幅な小型化、軽薄化、性能向上など技術革新につながる可能性を秘めた新しいパラダイムの提案ともいえる」としている。
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