サイプレス、水やノイズに強くて開発も簡単な静電容量ボタン制御ICを発表:センシング技術
サイプレス セミコンダクタは、防水機能など多機能な静電容量ボタンを容易に開発できるコントローラIC「CapSenseコントローラ/CY8CMBR3xファミリ」を発表した。耐水機能や近接センサー機能といった付加機能搭載時もファームウェア開発の必要がないなどの特長を備える。
サイプレス セミコンダクタは2014年2月26日、防水機能など多機能な静電容量ボタンを容易に開発できるコントローラIC「CapSenseコントローラ/CY8CMBR3xファミリ」を発表した。既にサンプル出荷を開始し、2014年3月中旬から量産を行う予定。
静電容量ボタンは、銅パターンなどの検出パネルを使い静電容量の変化で指などの接触を検出するボタン。凹凸がないボタンを実現できデザイン性に優れる他、従来の機械式ボタンのような摩耗などもないといった利点を備え、民生機器、産業機器など広い分野で機械式ボタンを置き換えつつある。
サイプレスは、需要が拡大する静電容量ボタンのコントローラICで、「世界シェア2位のベンダーの4倍の出荷数を誇る世界シェア1位」とし、独自性のある静電容量ボタンコントローラICを展開する。
サイプレスの静電容量ボタンコントローラICの特長としては、耐ノイズ性、耐水性の高さや、ボタンシステムの設計が容易といった点がある。
耐ノイズ性では、静電容量ボタンと似た原理の静電容量式タッチパネルコントローラICなどでも採用する独自の信号読み取り技術(関連記事:充電中のスマホの誤入力を防ぐタッチスクリーン制御IC、ノイズ耐性は従来比2倍)などを応用し、誤動作の少ない確実な検出を実現する。
耐水性では、水滴による誤タッチを防止する「シールド電極技術」や、水流と指などの操作を切り分け判別できる「ガードセンサー技術」を実現し、屋外や水回りなど水滴や水流が存在する環境でも静電容量ボタンが正常に動作する機能を持つ。
開発環境では、ファームフェア開発を不要にする技術「CapSense Mechanical Button Replacement」(CapSense MBR)を提供する他、静電容量ボタンが正常な動作を行うために設定(コンフィギュレーション)を自動調整する「SmartSenseオートチューニング機能」を搭載する(マニュアルチューニングも選択可能)。
ファームウェア開発を不要とする「CapSense Mechanical Button Replacement」(CapSense MBR)を使った静電容量ボタン開発のイメージ (クリックで拡大) 出典:サイプレス セミコンダクタ
静電容量ボタンの開発は通常、評価/試作ボード上で、ボタンの数やタイプ、耐水性機能の有無、感度などの性能をパラメータ入力するコンフィギュレーションを行う。その後、銅パターンなどの検出パネルを覆うカバーレイの厚みが変わるなどボタンを配置する条件が変わるごとに、パラメータを微調整するチューニングが必要となる。場合によっては、カバーレイの厚みのばらつきなどに対応するため、量産時にも繰り返しチューニングを行う必要もあり、開発の手戻りが多かった。
この状況に対し、SmartSenseオートチューニング機能は、電源を入れるたびに、静電容量ボタンがより正確に動作するための最適なパラメータに自動調整する機能。正確なボタン動作を実現しながら、コンフィギュレーションした後のチューニングの手間を省くことができる。「オートチューニングできる範囲には限りがあるが、一般的な環境変化には対応できる。例えば、11インチサイズのノートPC向けにコンフィギュレーションした状態のまま、15インチサイズのノートPCに搭載しても、自動チューニングだけで十分に対応できる」という。
今回、発売したCapSenseコントローラ/CY8CMBR3xファミリは、これらサイプレス独自の静電容量ボタン向け技術を搭載、強化した製品。強化した点はLED制御機能など付加機能を増やした他、ファームウェア開発を不要とするCapSense MBRをより強化し、これまでファームウェア開発が必要だった耐水機能や近接センサー機能など付加機能もパラメータ設定だけで使用できるようになった。
CY8CMBR3xファミリは、16ボタン/8LED制御対応の「CY8CMBR3116」や11ボタン/2スライダー対応の「CY8CMBR3106S」の他、2ボタン/2LED制御対応品など1つのファミリで幅広いボタン数に対応できる製品ラインアップも特長になっている。
サイプレスでは、新製品の評価キットとして、カバーレイを付け替え可能で拡張性を備える「CY3280-MBR3」(価格:25米ドル)を販売している他、CapSense MBR対応のコンフィギュレーションツール「EZ-Clink」の無償配布も既に実施している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- サイプレス、PSoCの次期主力製品の量産を開始
サイプレスは、プログラマブルSoC「PSoC」のボリュームゾーン向け新製品「PSoC 4」の量産を開始したと発表した。CPUコアに「ARM Cortex-M0」を搭載した製品であり「今後のPSoCの主力を担う基幹製品」と位置付け、8ビット/16ビットクラスのマイコンに対抗した拡販活動などを展開していく。 - スキーグローブを着けたままの操作を可能にする静電容量式タッチパネル制御IC
サイプレス セミコンダクタは、静電容量式タッチパネルコントローラICとして、手袋をした指での操作も高精度に検出できる機能を実現する製品など3製品を発表した。 - 静電容量方式のタッチ・スクリーン、マルチタッチ対応の実現方法
ユーザーは思い通りに操作できないタッチパネルを嫌う。静電容量方式のタッチパネルを選択したとしよう。マルチタッチが必要であれば、相互キャパシタンス方式の採用をお勧めする。解像度を高めるには意味のないデータを除去するソフトウェアが必要になる。雑音対策も重要だ。