25米ドルのFirefoxスマホ、新興市場を狙う:MWC 2014(1/2 ページ)
スペイン バルセロナで開催中の「Mobile World Congress(MWC 2014)」(2014年2月24〜27日)で発表された、Firefox OS搭載のスマートフォンは、25米ドルという低価格で一気に注目を集めた。新興市場において、低価格のフィーチャーフォンの置き換えを狙うが、懐疑的な見方もある。
Firefox OSを搭載したスマートフォンを25米ドルで投入する――。中国の大手チップベンダーであるSpreadtrum CommunicationsとMozillaは、「Mobile World Congress(MWC 2014)」でこのように発表した。Web技術によって、衝撃的な低価格を実現したこのスマートフォンは、世界の新興市場に旋風を巻き起こすだろう。
両社によると、Firefox OS搭載スマートフォン向けに、SpreadtrumがWCDMA/EDGE対応チップセットを提供するという。
第1世代のFirefox OS搭載スマートフォンについては、既に2013年にAlcatel-LucentやZTE、LGなどのメーカーが投入しているが、これらは主に通信事業者のチャネル経由で使用する端末だ。欧州最大手のTelefonicaなどのキャリアも、Firefox OS搭載スマートフォンを採用済みだが、多くのアナリストによると、「スマートフォン市場に対する影響はほとんどない」という。米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsでシニアアナリストを務めるScott Bicheno氏は、「スマートフォンの世界出荷台数全体のうち、Firefox OS搭載スマートフォンが占める割合は、1%未満にすぎない」と述べる。
しかし、SpreadtrumとMozillaが展開する25米ドルのスマートフォン戦略は、このような現状を変えることになるだろう。
Spreadtrumでコーポレートストラテジー担当バイスプレジデントを務めるDiana Jovin氏は、「25米ドルスマートフォンを自由市場に投入することにより、これまでスマートフォンを所有したことがないユーザーをターゲットにできる」と述べている。
Spreadtrumのスマートフォン開発プラットフォームは、Firefox OSをサポートすることにより、極めて重要な役割を担うことになる。あらゆる種類のチップやボード、ディスプレイをはじめ、携帯端末を迅速に完成させるために必要なソフトウェアやハードウェアをすべて統合する、ターンキー型ソリューションとして提供していく。
中国の携帯電話機メーカーの中には、欧米のメーカーと比べてコスト構造がはるかに優れている企業も多い。これらのメーカー各社は2014年に、Firefox OSを搭載したエントリーレベル向けスマートフォンを投入することにより、瞬く間に新興市場を席巻していくだろう。
WebベースのOSだからこそ、実現できる低価格
25米ドルという価格は、想定内ではあったものの、アナリストたちを少なからず驚かせた。
米国の市場調査会社であるIHSのコンシューマ&コミュニケーション部門でシニアアナリストを務めるWayne Lam氏は、「通常、スマートフォンの原価予算では、全体の30%をディスプレイが、45%を主要な電子部品が、残りの25%をバッテリーやカメラ、筐体などが占めている。“25米ドル”は、製造コストのことなのだろうか」と疑問を述べた。
これに対しSpreadtrumのJovin氏は、「販売価格が25米ドルだ」と明言する。
Firefox OSはWebベースであるため、メモリ容量が少なくて済む。これが、25米ドル低価格を実現する上で重要な要素となっているのは明らかだ。Jovin氏は、「一般的なスマートフォンには、1Gビットの組み込みDRAMと2GビットのNAND型フラッシュメモリを搭載する必要があるが、Firefox OS搭載スマートフォンのメモリ容量はその半分で済む」と述べる。
これについてはLam氏も納得し、「Firefox OSでは、OSそのものとサービスの大半がクラウドに存在するため、処理性能やメモリ容量が少なくて済む。例えば、Firefox OS向けのアプリの大半はHTML 5で記述でき、モバイルブラウザ上で稼働できる」と述べている。
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