BtoB品質の高速/高画質印刷をインクジェットで――エプソン「PrecisionCore」:新技術
エプソンのビジネスインクジェットプリンタ新製品に採用された次世代プリントヘッド技術「PrecisionCore(プレシジョンコア)」。レーザープリンタ並みのスピードと高画質をインクジェットで可能にしたそのテクノロジーとは?
セイコーエプソンとエプソン販売は2014年2月27日、ビジネスインクジェットプリンタ新製品8機種を発表した。今回の新製品群には、エプソンの次世代プリントヘッド技術「PrecisionCore(プレシジョンコア)」が採用されている。
ビジネスインクジェットプリンタ新製品は2014年3月6日発売のA4対応「PX-M840F」「PX-S840」、2014年3月20日発売のA3ノビ対応「PX-M5041F」「PX-M5040F」「PX-S5040」、2014年4月10日発売のA4対応「PX-M741F」「PX-M740F」「PX-S740F」の計8機種
PrecisionCoreは、同社のインクジェットプリント技術を発展させた「薄膜ピエゾプリントヘッド技術」の総称。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)製造技術をベースとして開発された次世代のプリントチップがそのテクノロジーの中核を担う。2013年9月25日にベルギーで開催された業界最大級の展示会「第11回 ラベル エキスポ」で発表された(関連記事:エプソン、次世代プリントヘッド技術「PrecisionCore」発表)。
PrecisionCoreプリントチップは、シリコンウェハ上に精密なピエゾアクチュエータとインクノズルを集積したものだ。このピエゾアクチュエータは業界最大の変位量を誇り、同社の前世代ヘッドに比べてインクを噴射する能力を2倍以上も高めている。これにより、プリンタの小型化と高密度化を実現。また、マイクロメカニカル方式のアクチュエータを採用しているため、熱を発生させることなく、高速でインクを吐出させることができる。
PrecisionCoreプリントチップの主要構成要素。薄さ1ミクロンのピエゾアクチュエータが、最小1.5〜32.5ピコリットルの真円に近いインク滴を、直径約20ミクロンのノズル穴から正確に吐出する。その数は1秒間に最大5万発だという
セイコーエプソン プリンター事業部 BIJ推進プロジェクト部 部長の和田高一氏は「PrecisionCoreの中核となるマイクロTFPプリントチップは、エプソンが長年にわたって磨き続けてきたインクジェットプリンティングの技術に、独自のピエゾ材料分野の革新、高度なMEMS製造技術を融合させることで実現できた」と語る。
用途に合わせてさまざまな配列が可能な高い拡張性により、デスクトップ用のオフィスプリンタで使われるシリアル方式(可動式ヘッド)から、産業用のラベル印刷向けなどに使われるライン方式(固定式ヘッド)まで、多様なプリントヘッドを構成することが可能。エントリー向けの低価格モデルから何千万円もする産業用印刷機まで、このPrecisionCoreプリントチップでカバーできるという。
「新開発のPrecisionCoreプリントヘッドを搭載した今回の新製品は、プリントヘッドのワイドバンド化により、一度に印刷できる幅が大きくなった。加えて紙送りの最適化により、例えばPX-M840Fでは、カラー/モノクロ印刷で20ipm(image per minute)と、レーザープリンタ並みのスピードを実現している」(和田氏)。
PrecisionCoreプリントヘッドはノズルの高密度化も同時に実現しており、標準の解像度も600dpiと従来機種(360dpi)に比べ約2倍の高画質を実現。また、これまでのマイクロピエゾヘッドの特徴でもあった「耐久性」や「熱を使わないことによるインクの自由度」など優れた特徴はそのまま継承している。
セイコーエプソンでは昨年(2013年6月)、PrecisionCoreの新規生産ラインを国内に構築。前工程が諏訪南事業所(長野県諏訪郡富士見町)、後工程が東北エプソン(山形県酒田市)という国内生産体制に、総額約160億円を投じた。このことからも、PrecisionCoreが同社の次世代を担う新技術として位置付けられていることがうかがえる。
「BtoBのお客さまからインクジェットプリンタに“スピード”と“高画質”が求められていたが、PrecisionCore技術によってそれが実現できた。ファーストプリントが速く、低プリントコスト、小型化といったメリットを生かし、ビジネス市場でインクジェットプリンタを拡大していきたい」(同社)。
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