GMが“車輪が付いたスマートフォン”実現へ、スマホとの連携はもう不要?:MWC 2014
自動車とスマートフォンを連携するのではなく、自動車そのものをネットワークにつなぐ取り組みが加速している。GM(General Motors)は、「Mobile World Congress(MWC 2014)」において、同社の自動車にLTE通信機能を内蔵すると発表した。
携帯通信事業者はこれまで、売上高増加を実現することができる唯一のプラットフォームとして、スマートフォン市場に注力してきた。しかし、今やスマートフォンに代わり、自動車市場に注目するようになっている。「次なる大きな成長を期待できるのは自動車市場だ」と考える通信事業者が増えているのだ。
自動車メーカー各社も、こうした流れをチャンスとばかりに、自動車を「車輪が付いたスマートフォン(smartphones on wheels)」とうたい、大々的に宣伝し始めている。
こうした中でQualcommは、自動車市場向けにLTEチップセットを提供する唯一の半導体チップメーカーとして、自動車向けLTEの実現に向けた取り組みを加速させている。その一環として同社は、LTE-Advancedのカテゴリ6をサポートするモデムIC「Gobi 9x30」を発表した。Qualcommによると、LTE FDD/TDDで最大40MHzのキャリアアグリゲーションが可能で、通信速度は下り最大300Mビット/秒をサポートするという。
またGM(General Motors)は、「Mobile World Congress(MWC 2014)」(スペイン バルセロナ、2014年2月24〜27日)において、4G(第4世代)のLTEサービスに対応した自動車を発表する予定であることを明らかにした。LTEをサポートする機能を統合し、外付けアンテナを取り付けることで受信可能範囲や接続性を最大化するという。
GMは、北米市場におけるパートナー企業として、AT&Tと協業する。両社は2014年中に、米国およびカナダにおいて、セキュリティや診断、インフォテインメントなどの高性能サービスを無線で提供する予定だとしている。対象車種は、Chevrolet(シボレー)やBuick(ビュイック)、小型トラックGMC、Cadillac(キャデラック)などだ。
GMはプレスリリースの中で、LTEモデムを搭載した自動車の実現をアピールするとともに、「接続サービスを利用する上で、スマートフォンは不要である」という点を強調している。
またGMは、「車載LTEモデムによって、GMが提供しているテレマティクスサービス『OnStar』に高速かつ安全に接続できるようになる」としている。
自動車メーカー各社は、今後はテレマティクスやインフォテインメント以外の分野でも、コネクティビティの活用が拡大していくとみている。
近い将来、LTEで自動車の周囲の情報をやりとりすることにより、ドライバーや同乗者の安全性と利便性を高めることも可能になるだろう。LTEは今後、車車間通信や路車間通信にも採用されていくとみられる。GMは「クラウドから情報を引き出し、渋滞情報やナビゲーション情報をリアルタイムで更新できるようなサービスも登場してくるだろう」と述べている。
Qualcommの広報担当者はEE Timesに対し、「通信事業会社が次世代のLTE-Advancedネットワークを配備することから、自動車メーカーは車両プラットフォームのアップグレードや新技術の導入といった計画を練り始めた」と話している。
LTEモデムICについては、自動車メーカーはLTE対応の20nmプロセス品(Gobi 9x15)もしくはLTE-Advanced対応の28nmプロセス品(Gobi 9x30)のいずれかを選択することができる(関連記事:クアルコムが車載情報機器向けプロセッサ市場に参入、LTEモデムの実績を生かす)。両品種ともWiFi IEEE 802.11ac/pおよびBluetooth 4.0に対応したQualcomm製チップ「QCA6574」と、同社が最近発表した車載用アプリケーションプロセッサ「Snapdragon 602A」を統合している。これにより、3G、LTE、Wi-Fi、Bluetooth、GNSS(衛星測位システム)など、さまざまな規格に適した車載システムアーキテクチャを実現しようとしている。
車載LTEモデムとLTE対応スマートフォン
アプリとネットワーク加入料という2つの側面において、LTEモデムを内蔵した自動車とLTE対応スマートフォンが共存できるのかどうかは、現時点では不明だ。
GMは、アプリ開発者がGM車のインフォテインメントシステム向けのアプリを開発できるよう、一連のAPI(Application Programming Interface)を提供することを公にしている。GMのソフトウェア開発キット(SDK)は、ドライバーが自動車を購入した後にアプリや機能を追加できる新しいフレームワークを実現するとみられている。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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