シャープ、センサー光源向けに安全対策済み赤外レーザーを開発:センシング技術
シャープは2014年3月12日、3次元センサー用半導体レーザーとして「業界で初めて目に対する安全対策部品を一体化した」(同社)という新製品の開発を発表した。ゲーム機などの民生機器をはじめ、産業機器やセキュリティ関連機器など3次元センサーを使用する各種用途に向けて展開する。
シャープは2014年3月12日、3次元センサー用半導体レーザーとして「業界で初めて目に対する安全対策部品を一体化した」(同社)という新製品の開発を発表した。2014年4月18日からサンプル出荷を開始し、同年7月から量産を予定する。サンプル価格は5000円(税別)。
ゲーム機のジェスチャー入力などに使用される3次元センサーは、光源から光を発し、その反射などから物体との位置、距離などを検出する。光源としては、LEDと半導体レーザーの2つが主流だ。
光源 | 消費電力 | 高速応答性 | 目に対する安全性 |
---|---|---|---|
LED | △ | × | ○ |
レーザー | ○ | ○ | × |
シャープの資料より作成 |
半導体レーザーは、LEDに比べ、消費電力が低く、光源を点滅させるなどの場合に応答性が速いといった特長を持ち、より3次元センサーの光源に向くとされる。しかし、レーザーは、光源サイズが小さく、指向性が強いため、エネルギー密度が高く、目に入ると網膜を損傷するなどの危険性を伴う。とりわけ3次元センサーなどの光源は赤外光など目に見えない光(不可視光)であり、無意識にレーザーが目に入ってしまうため、特に危険だ。
そのため、不可視光の半導体レーザーを3次元センサーなどで使用する場合、エネルギーの集中を避けるため、光源サイズを大きくする拡散板などの安全対策(アイセーフ)が不可欠で、安全対策を施すようJIS(日本工業規格)で規定されている。ただ、安全対策を行った場合、光源部の部品数が増え、サイズの増大、コスト高を招く。シャープによると、「半導体レーザーは、安全対策が必要な点が敬遠され、3次元センサーの光源としてLEDが主流になっている」という。
そこで、シャープは、半導体レーザー自体に安全対策機能を搭載し、センサー設計時に安全対策を付加せずに済む赤外高出力半導体レーザー(型番:GH4837A1TG)を開発した。
新製品は、半導体レーザー上にキャップのような樹脂製の光学素子を装着。光学素子内には、レーザー光を散乱させるフィラーという物質が混ざっていて、小さな光源サイズで入ってきたレーザー光を拡散させ、目に入っても目を傷つけない直径2mm程度の光源サイズまで拡大させる。光学素子の上面は、ドーム状に加工し、放射角を一定(新製品は30度)に制御している点も特長になっている。
この光学素子の高さは4.3mm。「従来の拡散板による安全対策では、レーザーと拡散板との間に12mm程度の距離を取る必要があり、光源部の小型化も図れる」とする。
レーザーの最大光出力は700mWで、電力変換効率は36%。ピーク発振波長は830nm、しきい値電流270mWとなっている。
シャープでは、「半導体レーザーの課題だった安全対策の必要がなく、LEDと同様の使い勝手が実現できた。従来の半導体レーザーやLEDからの置き換えを狙うとともに、新たな用途も探っていきたい」としている。
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