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台風から思い付いた――「オシアナス」を支える新型ソーラーセルエネルギー技術(2/2 ページ)

カシオ計算機のフラッグシップモデル腕時計の1つである「OCEANUS」(オシアナス)の新製品は技術的特長の1つとして、“新開発ソーラー”をうたう。発電効率を高めることが難しい中で、発電能力を大幅に高めることに成功した“新開発ソーラー”はどのようなものか、開発者の話も交えて紹介する。

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針の影を分割できないだろうか

 針の影はセルの発電量に大きく影響する。当然ながら、刻々と針の位置は変わるので、複雑に各セルの発電量は変化してしまう。

 発電量の小さいセルを作るないために、針の影を分割できないだろうか――。



斉藤氏が考えた針の分割イメージ

 カシオの時計事業部モジュール開発部に所属する斉藤雄太氏は、3年ほど前に、針の影を分割することで、1つのセルに針の影が集中することを避けて、発電量の低下を小さくすることを思い付いた。「けれども、針を分割するわけにはいかないので、ずっと、ぼんやりとアイデアを考え続けていた」という。

 そして、従来よりも1つ多いモーターを搭載するなど高機能ながら太い針、立体的な造形の文字板を搭載する方向で新製品であるOCW-S3000の開発が始まり、発電量確保が迫られている中で、斉藤氏は、あるアイデアを思い付く。

 「天気予報で台風を見て思い付いた」というアイデアは、渦巻き状にセルを配置することだった。扇型の各ソーラーセルを円の中心、真ん中、外側の3つに分割し、それを渦巻き状につなぎ合わせるものだ(図参照)。これにより1本の針の影を3つのセルで分担できる計算。針1本の状況であれば、1セル当たりの発電量の落ち込みを従来の3分の1に押さえることができるというわけだ。

左=渦巻き形状のソーラーセル(図中右)を生み出すまでの過程 出典:カシオ計算機 /右=実際の渦巻き形状ソーラーセル(写真中央右) (クリックで拡大)

受光面積が平均5%拡大

 実際に複数の針が動く状況で、計測したところ、最も受光面積が小さくなる時間帯同士の比較で約20%、全時間帯でも平均約5%、受光面積が拡大するということが分かった。

 「複雑な形状に、パネルメーカーには驚かれた」というものの、製造上の大きな問題などもなく、すぐにOCW-S3000など3種のOCEANUSへの搭載が決定した。

 OCW-S3000の文字盤、針といった加飾部分の面積は、従来品(OCW-S2400)に比べ約1.4倍広がり、よりデザイン性、針の視認性の高い時計を実現した。

左=渦巻き形状の分散型ソーラーセルによる実際の効果測定データ 右=従来モデルと分散型ソーラーセルを採用したS3000との加飾面積の比較 (クリックで拡大) 出典:カシオ計算機

既に次の新型ソーラーセルも


斉藤雄太氏

 「個人的にも、OCEANUSは大好きな時計であり、何としても良いデザインの製品を実現したかった」という斉藤氏は、入社4年目の28歳。「社内では“ソーラーバカ”と呼ばれています」と笑う。

 既に次のソーラーセルの開発に着手。よりシンプルな渦巻き形状のソーラーセルや文字盤などデザインに合わせて、より受光面積を最大化できるソーラーセルの開発を進めていて、「この春には、さらに新しいソーラーセルを搭載した製品が登場する」としている。

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