日本の医療機器、伸びるのはこれから――大胆な発想で30年後の世界を狙う:ローム×日本大学 産学連携記念シンポジウム(2/2 ページ)
ロームと日本大学が開催したシンポジウムに、公益財団法人医療機器センターの理事長を務める菊池眞氏が登壇した。同氏は、これまで日本が医療機器の研究開発に大規模な投資を行ってきたことを踏まえ、「しっかりした基礎があるのだから、日本の医療機器が伸びるのはこれからだ」と主張した。
医療機器開発、2つのポイント
ただし菊池氏は、今後世界の医療機器市場で戦うには、医療機器の研究開発を抜本的に見直す必要があると述べる。ポイントは2つ。「長期戦を覚悟すること」「医療機器単体ではなく、システムを開発すること」である。
生命に直接関わるということもあり、医療機器分野は極めて保守的だ。「基礎研究から実用化までの時間が非常に長い。医療機器の開発は数十年というスパンで考える必要があり、民生機器の尺度とは違うということを、政府もメーカーも理解しなくてはいけない。その上で政府は、公的資金を投入するなど適切なバックアップの体制を整えてほしい」(菊池氏)。
赤ちゃんにチップを埋め込む? 大胆な発想を
現在、革新的な医療機器の開発はかなり難しくなっているという。「手術ロボット、インプラント(体内埋め込み型)機器、非浸襲(身体に傷を付けない)の血糖値計など、革新的に見えるような医療技術というのは、大抵昔から研究されている」(菊池氏)。
そこで重要になるのが、医療機器単体ではなく、医療システムとして捉えることだ。例えば血圧計は、スマートフォンと連携したり、クラウドにアップされたデータを医師が確認したりというように、血圧計単体で完結する仕組みではなくなりつつある。同氏は、技術革新だけにこだわるのではなく、他の機器やシステムと組み合わせた時にどう機能すれば便利なのかということを、俯瞰(ふかん)して考える必要があると指摘した。
さらに、大胆な発想も必要になる。菊池氏は、「インプラント機器や技術は昔からある。では例えば、赤ちゃんが生まれた時にチップを埋め込んで、生体情報を生涯モニタリングし続け、異常を検知したら治療をすぐ始められるようなシステムを作ってしまえばどうか。実用化までに長い時間を要する医療機器の世界では、“30年後の世界を想定して狙う”といった共通の目標を官民一体で設定し、ダイナミックな発想をしていくことも重要になってくる」と語った。
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