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シリコンに代わる材料を用いたCMOSイメージセンサー、8Kカメラの高感度化を実現センシング技術

NHK放送技術研究所が「技研公開 2014」で披露しているCMOSイメージセンサーは、光電変換部にシリコン以外の材料を用いている。シリコンよりも光を吸収する結晶セレンだ。従来の表面照射/裏面照射型CMOSセンサーはその構造上、高感度化を図るのがだんだん難しくなっている。大幅な高感度化には、新たな材料を採用することが必要だ。

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 NHK放送技術研究所(以下、NHK技研)は、「技研公開 2014」(2014年5月29日〜6月1日)において、スーパーハイビジョン(8K)カメラの小型化と高感度化に向けた技術を紹介した。1つは1億3300万画素のイメージセンサー、もう1つは新しいシリコン以外の材料を光電変換部に用いた新しいCMOSイメージセンサーである。

 開発が進められている新しいCMOSイメージセンサーの大きな特長は2つある。入ってきた光を全て光電変換部に導くことができる(光開口率100%)構造と、光電変換部にシリコンではなく結晶セレンを用いていることだ。

 従来のCMOSイメージセンサー(表面照射型)は、ウエハー上に光電変換部としてフォトダイオードを形成し、その上に配線層を作り込む。この構造だと、配線によって光電変換部に入る光の量が減ってしまう。そこで、より光を取り込める構造の開発とともに、シリコンよりも光をよく吸収する非結晶セレンや結晶セレン、CIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレンから成る化合物半導体)を光電変換部に使うことを検討してきた。

 開発中のイメージセンサーは、配線層の上に、結晶セレンで厚さ約500nmの薄い光電変換膜を形成するという構造になっている。NHK技研は、これを「光電変換膜積層型固体撮像デバイス」と呼ぶ。配線層の上に光電変換部があるという点では、裏面照射型のCMOSイメージセンサーと同じだ。だが、「製造したCMOSセンサーを裏返し、ウエハーの裏を研磨して薄くすることで、光を取れるようにする」という裏面照射型の製造工程は難しく、その工程を起因としたノイズや欠陥画素が発生するというデメリットもある。NHK技研は、「ウエハーを削るのにも物理的な限界があるので、高感度化を図るのがだんだんと難しくなっている。CMOSイメージセンサーを大幅に高感度化するには、材料を変えるのが一番効くと考えている」と話す(関連記事:CCDやCMOSを超える裏面照射型CMOSセンサって? )。

 光電変換膜積層型固体撮像デバイスによって、90%以上の高い光電変換効率が期待できるという。

左は「光電変換膜積層型固体撮像デバイス」と従来のCMOSイメージセンサーの構造の比較。右は、試作した固体撮像デバイスと、非結晶セレン/結晶セレンを塗布したガラス(クリックで拡大)

 今後は、光から生成された信号電荷を増倍させる技術や、ノイズを低減する技術などの開発を進め、イメージセンサーのさらなる高感度化を目指すとしている。

光電変換膜積層型固体撮像デバイスを搭載した、デモ用のカメラ(左)と、そのカメラで撮影した映像。「乱れがない映像を撮影できたというだけで、われわれにとっては大きな成果」(NHK技研)だという(クリックで拡大)

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