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「SSDが壊れた」後(後編)福田昭のストレージ通信(8)(1/2 ページ)

前編では、SSDはいずれ壊れるという話をした。後編では、壊れた(データを読み出せなくなった)場合の対処法について説明する。データ復旧サービス企業の1つは、SSDの不具合を4段階に分け、それぞれ異なる手法を適用している。

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壊れたSSDからデータを取り出す

 SSD(Solid State Drive)が壊れた場合、具体的にはデータを読み出せなくなった場合に、ユーザーはどうすれば良いのだろうか。常識的な対策は、SSDが壊れる前の使い方にある。バックアップをこまめに取ることだ。バックアップがあれば、被害を最小限度に食い止められる。

 もちろんバックアップが対策として重要なことくらいは、ほとんどのユーザーが了解しているだろう。問題は、バックアップの作業量にある。既にハード・ディスク・ドライブ(HDD)で起こっていることだが、記憶容量の著しい増加がバックアップに必要な時間の長期化を招いている。例えばUSB 2.0ケーブルで500Gバイトのデータをバックアップするとしよう。データ転送の実効速度を200Mビット/秒とすると、500Gバイトのデータ転送には、およそ5時間半を要する。かなりの作業時間である。

 不幸にしてバックアップしていなかったSSDのデータが読み出せなくなったときは、市販のデータ復旧ツールを試すか、データ復旧サービス企業に相談するか、あるいは、データの取り出しを諦めることになる。

急増するSSDのデータ復旧依頼

 データ復旧サービス企業の「Kroll Ontrack」によると、NANDフラッシュメモリを内蔵した機器のデータ復旧を依頼される件数は急速に増加しつつある。

 例えば2011年と2012年を比べると、モバイル機器(携帯電話機、PDA、メディアタブレット)の依頼件数は161%増、SSDの依頼件数は62%増、暗号化データ内蔵機器の依頼件数は16%増だったという。HDDに比べると件数そのものはまだ少ないものの、急速に増えている。

 SSDをはじめとするフラッシュストレージの弱点は、HDDに比べると商品としての歴史が極めて短いことだ。50年を超えるHDD製品の歴史の厚みは、データ復旧技術の厚みでもある。これに対し、SSD製品の歴史は10年に満たない。このため、データ復旧の手法が確立していない。データ復旧の戦略や技術などが現在も研究され、開発されている。

不具合の程度に応じてデータ復旧の手法を選ぶ

 例えばデータ復旧サービス企業の「DriveSavers Data Recovery」は、SSDの不具合を4段階(レベル1〜レベル4)に分けることで、データ復旧の成功率を高めていることをフラッシュメモリ業界のイベント「Flash Memory Summit」で2013年8月に公表した。

 ここでは不具合が最も軽い、軽度の不良を「レベル1」と定義し、不具合が最も重い、重度の不良を「レベル4」と定義した。そして各レベルに応じたデータ復旧手法を選択することにした。

 不具合が最も軽い「レベル1」のSSDは、かろうじて動くものの、機能不全が起きている。例えばホストマシンがSSDを認識しており、記憶容量を正しく表示する。しかし読み書きのコマンドをSSDは受け付けてくれない。完全に壊れているのではないが、正常に動作するわけでもない。いわば「壊れかけ」の状態である。


「レベル1」の不具合とデータ復旧の概要

 レベル1の不具合におけるデータ復旧の基本的な考え方は、データインタフェースとコントローラを介して論理ブロックアドレス(LBA)にアクセスすることだ。無傷のファイルシステムを介してデータを取り出すことができれば、成功と言える。SSDユーザーが市販のデータ復旧ツールを試せる程度の不具合でもある。

SSDを認識するが、正常な認識ではない場合

 不具合が「レベル2」になると、SSDをホストマシンが認識するものの、正常に表示されない。例えば記憶容量が「0MB」と表示されたりする。あらゆるコマンドをSSDは受け付けず、「固まった」と称される状態になっている。


「レベル2」の不具合とデータ復旧の概要

 こうなると、特別なファームウェアを使用してLBAへのアクセスを試みることになる。データ復旧ツールには、データ復旧サービス企業とSSDベンダーが共同で開発したカスタム品が使われる。

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