東芝は2014年6月、フラッシュメモリとCMOSトランジスタを近接して混載する技術を開発したと発表した。開発した技術をFPGAに応用することで、低消費電力で高性能な不揮発FPGAを実現できるという。
外部へライセンスも
FPGAは、ロジック素子と回路情報を記憶するメモリで構成されるが、現状のFPGAではメモリに揮発性のSRAMを用いている。そのため、SRAMの記憶を保持するための電力が必要になっている。これを不揮発メモリであるフラッシュメモリに置き換えることで消費電力を抑えることが期待されている。だが、フラッシュメモリとロジック素子(CMOSトランジスタ)は、素子構造と動作電圧が異なるため、同一チップ内への混載が難しかった。
東芝は今回、一般的なフラッシュメモリと構造の異なるMONOS型フラッシュメモリを適用し、書き込み手法と回路構造を工夫して、CMOSトランジスタとフラッシュメモリを近接して混載する技術を開発した。
開発した技術により、「従来のSRAM型FPGAと同等の高速動作を実現しつつ、動作中にチップ内で使用していない領域の電源を部分的に遮断し無駄な消費電力を削減できる。メモリの占める面積(FPGA全体の3割に相当)も半分に削減することが可能になる」(東芝)。東芝の試算によると、ロジック使用率が80%の場合で、SRAM型FPGAに比べて、約40%の電力削減が見込まれるという。
開発した書き込み手法は、書き込み時に大電圧を使用してもCMOSトランジスタ特性を悪化させないホットエレクトロン現象を利用した手法だとしている。
東芝は今後、開発した技術を自社内で活用していく他、外部企業へのライセンスも視野に検討を進める。
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